kkkのk太郎

タイガー 甦る伝説のスパイのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

インドの諜報機関”RAW”のエージェントたちの活躍を描くスパイアクション・フランチャイズ「YRFスパイ・ユニバース」の第2作にして、凄腕スパイ・タイガーが命懸けのミッションに挑む『タイガー』シリーズの第2作。

前作から8年。イラクでイスラム過激派組織”ISC”によるインド人看護師人質事件が発生。米国による空爆が7日後に迫る中、RAWは人質救出の任をあの男に託す…。

インド国内ではメガヒットを記録した本作だが、日本では残念ながら未公開。ソフト化も配信もされておらず、鑑賞するには輸入盤を買い寄せるしか手がないという状態が続いていたのだが、なんとこの度BS12が「サメジャッキーインド‼︎GW映画祭」というあまりにもボンクラすぎるラインナップの特集放送の中で本作の日本初放送に踏み切った。しかも、160分以上のランタイムがあるにも拘らず、まさかのノーカット放送でお届け。…この企画を通したプロデューサーは誰だあっ!!マジでありがとうございます!!

監督が交代したこともあってか、映画のカラーは前作とまるで違う。ラブコメ映画路線を廃し、シリアスかつハードな正統派スパイアクション映画としてこのシリーズを生まれ変わらせた。
前作のアクション描写には不満点も多かったのだが、本作ではその点が嘘のように解消されている。質・量共に申し分なく、一級のハリウッド映画に勝るとも劣らない凄まじいクオリティでタイガーの死闘が繰り広げられる。

ヴィランが不在だったことで、イマイチ映画に締まりがなかった前作。その点は製作陣も自覚的だったようで、今作にはISCという、完全にイスラム国(IS)をモデルにしたイスラム過激派組織がタイガーの前に立ち塞がる。特定の、しかもこれ以上ないほどわかりやすいテロリストを敵に据えることにより、映画としての輪郭がはっきりし、物語の推進力も高まっていたように思う。
ISの非道が描き込まれているのはもちろんなのだが、注目すべきは911の後、アメリカの振りかざした「正義」が更なる混乱と狂気を生んだことを指摘しており、彼の国による中東介入に批判的な視線が向けられているところ。米軍による空爆がタイムリミットを生み出している点でもそれは明らかである。この辺りの描写に、中東に近いインドだからこその問題意識の高さが窺える。

前作同様、インドとパキスタンの友好への願いが本作のテーマと言って良い。インドとパキスタン、敵対する両国のエージェントが手に手を取り合ってミッション遂行に邁進する、というのはベタではあるがやはり盛り上がる。
面白いのは、イスラム過激派と戦うパキスタンもまたイスラム教を信奉しているというところ。こうすることでイスラム教自体が悪ではなく、その教義を捻じ曲げて考えるテロリストにこそ問題があるということがキチンとメッセージとして伝わってくる。ドラマ的にも倫理的にも、この印パ共同戦線は非常に上手い。愛国精神に溢れていながら、ちゃんと他国やその宗教にも配慮する。そのバランス感覚の良さに痺れた!

前作のヒロインであり今作ではタイガーの妻として登場する女性、ゾヤ。彼女とタイガーの共闘も本作の見どころな訳だが、女性の権利を踏み躙るIS相手に女性エージェントが立ち向かうというのもまたこの映画の上手いところ。ドラマ的な盛り上がりと政治的な正しさがガチンと噛み合っており、それが物語の強度を増している。女性に対しては保守的なイメージのあるインドだが、映画における女性の描き方や扱い方はとても成熟しているように思う。

ポリティカルな要素の強い本作だが決して頭でっかちな映画にはなっていない。むしろ前作以上に荒唐無稽。冷静に考えると「そうはならんやろ」という点もたくさんあるのだが、それをパワーで押し切ってしまうのがこの映画の恐ろしいところである。
サルマン・カーンの肉体を活かすアクションシーンの少なさが前作最大の不満点だったのだが、今回はもう凄いことになってます!往年のスタローンばりに、ちぎっては投げちぎっては投げの大活躍っ!
筋肉量もスタローン並み。本作出演時、彼はすでに50歳を上回っていたと思うのだが、そんなことは微塵も感じさせないとんでもないマッスル💪むしろ前作よりもマッチョになってるような…。何食ったらあんな身体になるんだろう?豆?牛乳?

『特攻野郎Aチーム』(1983-87)的な、各分野のプロフェッショナルが集まるチームものとなった本作なのだが、タイガー以外のキャラクターが弱い。脇役をもう少し魅力的に描けていればもっとこの映画は面白くなっていたはず。ただ、今後シェアード・ユニバースが広がり主役級のキャラクターが増えていけばこの弱点は補われる事だろう。なんにせよ今後が楽しみである♪

ヘナチョコだった前作が嘘のような出来栄え。ランタイムは30分ほど長くなっているのだが、体感時間はむしろこっちの方が短かったかも。
次から次へと押し寄せるアクションの波に大興奮!日本未公開だったのが惜しまれる快作中の快作でした✨
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