emily

ダリダ~あまい囁き~のemilyのレビュー・感想・評価

ダリダ~あまい囁き~(2016年製作の映画)
3.4
1933年、エジプト・カイロのイタリア移民の家で生まれ、56年に歌手デビューしたダリダ。わずか2ヶ月で時の人となる。ゴールデングローブ賞を受賞し、順風満帆にみえたが。。ダリダの生涯を描いた作品。


美貌に美しい歌声。昔の映像と交差させながら、ダリダの生涯を描く。子供の頃の回想も交えながら、幸せの中にも悲しみを感じさせる。男性を軸とした視点で描かれており、明るさの中に常に死を匂わせる。

ただ女として普通の幸せを望んだダリダだが、持ち前の才能がそうはさせない。彼女の歌は世の人を魅了し、自然と名声がついてくる。しかし、彼女の才能そのものが男をダメにしていくのだ。

不器用だが懸命に生きたダリダ、歌うことも恋することも同じレールにあり、実体験が歌に生きている。恋の悲しみは歌で癒され、感情が溢れる歌声は人々を魅了する。

不運も彼女の歌にとっては良い作用に働いてくれる。悲しみがあるからこそ歌い続けることができ、人々に思いが伝わるのだろう。

普通の幸せを願いながらも、歌うことなしには生きていくことができない。歌だけはいつも彼女の味方で、優しく包み込んでくれるからだ。街並みの美しさと交差する歌が、その歌詞が、彼女の人生そのものを物語っている。恋がうまくいけば幸せな歌が溢れるが、幸せは長く続かない。

常に死が彼女を苦しめ、男たちが次々といなくなっていく。歌と愛の両方を中立に追い求めた彼女。短かったが両方の濃密にやってみせたのだ。愛と歌、彼女の人生にはどちらかを選ぶことなんてできなかった。どちらかを選べていたら、こんなに苦しまなくてすんだかもしれない。二つのことを完璧にこなすなんて、所詮無理なのだと言わんばかりに。。
emily

emily