けーな

ヘル・フロント 地獄の最前線のけーなのレビュー・感想・評価

3.8
第一次世界大戦の西部戦線で、ドイツ軍と至近距離で対戦する兵士達の有り様を描く。

第一次世界大戦を描いたイギリス映画では、最前線でドイツ軍と対峙する、張り巡らされた塹壕が出てくることが多いが、今作でも、その最前線の塹壕が舞台。すぐ目の前にドイツ兵がいる極限の状態で、何週間も過ごす兵士達。塹壕から頭がちょっと出ただけでも、即、撃たれる。そして、命令が出たら、塹壕が出て、敵が一斉に射撃してくる戦場に飛び出して行かなくてはならない…。

後方で支持する大佐などのお偉方は、命令を出すだけだから、まだいいけど、下々の兵士達は、死ぬと分かっていながら、敵が狙っている只中に、塹壕から飛び出して出て行くのだから、その精神状態と言ったら、ただならぬ物があったと思う。そんな極限状態に晒された兵士達の心の動きを細やかに描いた作品で、派手さはないけれども、心に響いてくる映画だった。ハリウッドとは異なる、イギリスらしい映画で、イギリスの名優達の演技が光っていた。

何より、ポール・ベタニーが、素晴らしかった。というか、ポール・ベタニー演じるオズボーン中尉が、皆から"おじさん"と呼ばれて慕われる人徳者で、とても魅力的な人だった。

そして、サム・クラフリンが、とても良かった。難しい役柄を、ほんと、いつも巧みに演じて、いい役者さんだなと思う。クラフリン演じるスタンホープ大尉が、酒に走るのも分かるなと思った。こんな極限状態にいたら、そんな風にもなるだろう。ほんとは、心優しい人なだけに。

若いラーリー少尉を演じるのは、エイサ・バターフィールド。「ヒューゴの不思議な発明」の子だ。さらには、「縞模様のパジャマ」の子も。大きくなったものだな。

料理係の兵士を演じているのは、トビー・ジョーンズ。いつも味のある演技をする名バイプレイヤー。ハリポタでドビーを演じたのは、この人だった。今作でも、とてもいい味出していて、良かったと思う。

さらにもう1人、やはり名バイプレイヤーのスティーヴン・グレアムも出ている。トロッターという名前の兵士役。いつも、コミカルな面もありながら、とっても和ませてくれる役が多い。「パイレーツ・オブ・カリビアン」が、いい例だ。今作でも、とても良かった。

ロシアのウクライナ侵攻が起きている今、戦争映画を観ると、心が痛い。
けーな

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