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鉄の爪のmitakosamaのレビュー・感想・評価

鉄の爪(1951年製作の映画)
2.9
デアゴスティーニで初鑑賞。鉄の爪って…フリッツ・フォン・エリックかと思うわ。
実際は怪奇スリラーみたいな感じ。

原案は、主演も兼ねた岡譲司。(出演俳優さんは岡譲司以外は誰もわからないな。)

物語ベースはジキル博士とハイド氏を元にしてる。

謎の怪物による殺人事件が起こる。目撃者は被害者の情婦。
情婦の元旦那田代(岡譲司)は戦争で死んだと思われてたが、生きていて教会で働いていた。
一度死んだ身なので潔く身を引く覚悟の紳士的な田代。とっても紳士的。

話が進むと、一方で戦争のトラウマが内面にあるのがわかる。南方戦線で飢えていたこと。工事現場の騒音で機関銃の音がフラッシュバックする。このシーン超上手い!当時はPTSDなんて言葉は当然無かったのに。

そして南方でゴリラに襲われ、自分の傷口からゴリラの血が混じってる、と思い込んでる。
「獣化妄想」なんてワードも出てきて精神病的な解釈も匂わせる。
灰田というインチキ臭い博士が現れて田代を誘惑する。終戦直後に浮浪者だった田代を見世物にしていた。

結局は田代が人間獣であり殺人犯だったのだが、その解釈が見方によりいくつにも取れるようになってるのが良い。
獣の血によって怪人に変身するようにも見えるし、戦争のトラウマによる精神的なものにも見えるし、灰田博士の薬のせいにも見える。
また“獣”を概念的に捉えて、人間の眠っている粗暴性とも取れる。そこに復員した者の葛藤も読み取れる。

怪奇映画のフォーマットだけど、結構内容が深いんだよ。1951年と戦争の傷跡が残る時代に、これを作ったのは凄いなぁ。

人間獣が前の奥さんをさらう所はキングコングのオマージュだと思うし、映画的な遊びも割とある。
ダンスショーのあるキャバレーのシーンも多くて結構楽しい。
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