eye

君が君で君だのeyeのレビュー・感想・評価

君が君で君だ(2018年製作の映画)
3.6
君が君で君だ(2018)

コメディとユーモアに溢れつつ 段々と辛らつなエッセンスを加えて後半はブラック節全開

軽快なテンポで駆け抜ける青春(?)映画

以下 けっこうバカなやつら

尾崎豊になりきる男(池松 壮亮氏)
ブラピになりきる男(満島 真之介氏)
坂本龍馬になりきる男(大倉 孝二氏)

3人は10年という年月にわたってパク・ヨンソン(以下 ソン a.k.a. 姫)を見守ってきた男たち

国も国籍も氏名も関係なく姫を「愛」という名の「異様な執着」あるいは「依存心」という形で展開されていく

そもそもソンが酔っ払いに絡まれてる所を助け出した所から全ては始まる

「国」という名のアパートでソンを神格化し崇拝する儀式がこっそり行われている

3人の言葉を借りるなら「治安を守っている」

ゴミから盗聴・監視まであらゆる方法を用いて昼夜 姫の生活を守る「兵士」と化している

3人のルールといえば 「姫に直接干渉してはけない」

とはいえ

端的にいえば ただのストーカー行為

行動を細かくチェックし交友関係のチェックしていて もはや ストーカー規制法に引っかかってる

残念ながら 1年以下の懲役 又は 100万円以下の罰金です

ストーリーは3人それぞれの自己愛や偏狭、妄想の振り切れたレベルの高さが描かれ

姫のありのままの姿を受け入れている

姫が自殺しかけても助けに行かずありのままを受け止めようとする

ストーリーの最後の最後まで自己愛が強い屈強な精神の強さと度を越した執着が見られる

それに加え3人は自身の人生から現実逃避している

結果的に姫を想うことの意識の高さがググッと捻じ曲がり その先にある姫の気持ちをしっかり理解することは難しい

単純に想う気持ちだけが先走って暴走している姿を拝める

気になったのが、、、

鎖に繋がれた坂本龍馬が首の鎖を解かれて以降 姫への想いの覇気をなくしてしまうという点だろうか

現実の認識を獲得して正気を取り戻す辺りに
洗脳的な行動からの正常あるいは異常の境界を見せてもらった

姫のダメ彼氏が作った借金を回収しに来る借金取りが「国」へ乗り込んできた所から「国」は「暴力」と「新たな考え方」というウイルスが入り込み

3人の意識を変化させていく

その反対に

借金取りの意識すらも変えていく

「国」が姫にバレた後の世界では3人の道はそれぞれ分岐する

際立つのはそのまま突っ走る尾崎

彼はストーリーを完走するべく必要なキャラではある 

彼女の類似の下着を付けて成り切ってみたり
彼女がハサミで切ってしまった髪の毛を食べてみたり ひときわ異才を放つ

干渉しないルールの中で尾崎は首輪を付けているはずが それを柱ごと壊し干渉し始める

>僕が僕であるために

振り切れた意識のその後の世界は屈強な妄想に取り憑かれる

彼がソンを追いかけるラストには更に幻想や妄想あるいは空想の世界に入り込む

リアルな世界ではあそこまで行き着くと最終的にはきっと「殺害」して自分のモノにしようとしてしまうだろうが その結末はいかに

冒頭はユートピアな世界観を匂わせつつ

作品全体は病的で異様な執着心が描かれていてきっと幸せにはなれないだろうなという形で終わる

池松 壮亮氏の静から動への芝居の振れ幅がとんでもないということは改めて理解できた

それだけで満足です
eye

eye