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クレイジー・リッチ!のKtoのレビュー・感想・評価

クレイジー・リッチ!(2018年製作の映画)
3.8
【ひとこと説明】
主要キャストにアジア系俳優のみを起用しており、ハリウッドにおける人種多様意識を高めるのに重要な役割を果たしたアップテンポで軽快な豪華ラブコメ映画.

古典的ラブコメの形式に則りつつ、”アジア系”のアイデンティティにまつわる種々の葛藤を描いている.

【感想と考察】
とにかくテンポが良く、テンションも高いので楽しい。
御曹司のゴシップがSNSで瞬時に拡散されて、周囲が翻弄されるところとかは映像もポップで最高のコメディシーンだった。

同じ”Asian”でも、出自も文化も一人一人違っていることを映画を通して発信している。

Chinese Americanであり、若くして経済学の教授になった優秀なキャリアウーマンである”Banana”なレイチェルと、名門大学に入りつつ家族のためにキャリアを諦めた母 エレノアの闘争がはっきりと描かれている。
レイチェルに対して、一般的な”嫁姑嫌悪”以上の憎しみを感じざるをえないエレノア…。これは中国的縁故・家族文化 vs 米国的個人主義文化の対立に、世代間や国際間での価値観の対立が重なってるのだろう。ポテンシャルが高く、もともとは野心的だったエレノアだからこそ、一層の憎しみが沸いたのだろう。
これって、現在の日本でもあらゆるところで観察される葛藤だよね…。

また、”お家柄”と”実力”のギャップでも衝突が生まれる。御曹司の自由恋愛が制限される話はたくさんあるけど、それをアジア舞台ですることで新規性が失われていない。

餃子を包むシーンは面白い。中国の伝統的な家族文化の魅力やそれで培われる家族愛の強さが一瞬で伝わる。

決定的なシーンで麻雀が使われるのも、中国賛歌を感じてよかった。「覚えていてくださ、それは私のおかげだと…」に込められた気高さと悲しみ…。
おそらく、聡明なレイチェルとしてはあの時点で心は決まっていたのだろうし、あれで終わっていても悔いはなかったとは思う。

ファーストクラスで旅立って、エコノミークラスで結末を迎えるおしゃれさ…。
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