このレビューはネタバレを含みます
あの擬似家族の背景を詳細には語らないところが絶妙で、想像力をかきたてられる。
捨てる神あれば拾う神あり。
捨てられたときの個々の背景、拾われたときのきっかけや事情などが頭の中で広がる。
映画の持つ奥行きの力なのだなと思う。
個人的にはどうしても、リンちゃんと呼ばれることになる女のコと彼女を取り巻く子育て環境に注目してしまった。
安藤サクラが、
「好きだから叩くなんて嘘。本当に好きだったらこうするんだよ」(←不正確です)
と(というようなセリフを)言ってリンちゃんをギュッと抱きしめるシーンにジンとくる。
オネショに効くおまじないだといって樹木希林がリンちゃんに塩を舐めさせるシーンも、しょーもないことだけど象徴的だと思った。
厳しい親ならオネショを叱り、体罰を加えることだろう。
今どきの過保護な親なら(私もその傾向)、
「幼児の塩分の取り過ぎはよくないです。根拠のない古い子育て方法で余計なことしないでください」
と言って世代間ギャップにギスギスするかもしれない。
肉親ではないからこそ、緩やかに認めあえる関係が温かい。
もうちょっとで見終わる、といったところで、うちの4歳の息子がやってきて一緒に見ていたら、リンちゃんが一人で遊んでいるラストシーンで、
「このコ、ひとりであそんでるね。ひとりぼっちなの? かわいそうね」
と息子が言った。
5歳の子どもが一人ぼっち。
悲しいけれど、最初から見てた私には、「菜っぱ、葉っぱ、腐った豆腐」と口ずさむ彼女に、数え歌を教えてくれた家族の記憶が残っていることに救われた。