本好きなおじぃ

万引き家族の本好きなおじぃのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
3.8
古い、狭い家で同居する五人の家族。
父親の治は、子供の祥太とスーパーで万引きをする日々。帰りには近所の駄菓子屋でさらに万引きを重ねる。
その家の主は初枝。年金暮らしである。そこに、治の妻の信代がクリーニング店に、妹の亜紀が性風俗店に勤め、一緒に五人で暮らしている。

そんなとき、マンションで一人で寂しそうにしている少女を治が発見する。家に連れ帰ってくるが、ほかの家族が帰した方がいいのではないかと言うものの、虐待の跡と思われるやけどの跡があったことから、そのまま家にいつかせることにして、名前を聞くと「ゆり」だという。
少し経った頃、ゆりがじゅりという名前でテレビに出ていた。両親が行方不明になっているにも関わらず、被害届等が出されていないことから、マスコミも不審がっていた。それを見た家族は、ゆりに「りん」という名前を付け、髪形を変えて保護しようと決心する。

そのうち、家族にある重大な事件が立て続けに起こり。



警察から捕まった夫婦に浴びせられる、「子供には母親が必要なんだよ」という追及。監督・脚本を書いた是枝裕和監督のメッセージでないとしたなら、なんだったのだろう。
おそらく、最後に黙して語られる言葉と対照的に表現され、いまの日本の親子のあり方や虐待被害者・加害者家族のあり様を見せつけている、そういうシーンだったと思う。

万引きや盗みを繰り返し、行政からは偽りの届け出でお金をむしり取る。
そんな家族のあり方は法的に正しくないということは常識的なことだが、しかし、虐待家庭に戻されるということほど法から外れて正しくないと認識されていることもないのではないかなと思う。

始終暗いテーマが横たわっているのだが、家族自体は明るいと思う。
いびつな家族のあり方だとしても、笑顔があることは大事であり、法的な家族とは異なっていても幸せでいられるのかもしれない。

日本の生き方の「ゆがみ」みたいなものが詰まっている。
詳らかに語れないくらい、この映画に複数の複合的な要素が詰まっていること自体が、この日本の家庭事情をありありと物語っているのは言うまでもない。