アキヒロ

万引き家族のアキヒロのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.0
「メリット盗ってきた」
貧困のリアリティーがすばらしい。
それに現実感を帯びさせる役者たちの演技がすごい。
…演技というか、みんなある意味ほぼ素なんじゃないかとさえ思う。

美男美女の俳優を使っているはずなのに、まったく華やかさがなく、日本の貧困層の雰囲気(しかもどこか懐かしくすらある)を再現しているのがすごい。
とくに安藤サクラや樹木 希林は美人だと思うが、メイクによってブス風味に見える演技がめちゃくちゃ上手い(寝顔がちゃんとブス)。
また、松岡茉優など若手女優の中でも演技派を選りすぐるのが上手い。

子供にまで犯罪の片棒を担がせているという現実は、おそろしく痛ましい現実だと思うが、本作を見ているとどこか楽しそうにさえ見えてくる。
「やべ、シャンプー忘れた」
「あの薬局、メリットしか置いてない」
まるでゲーセンで狙いの商品が取れなかった学生の会話だ。
かと言っても楽観もしていない目線が、本作の独特なところのような気がする。

柴田初枝が死に、自宅の庭に埋めたことが発覚した時、信代はこう言う。
「捨てたんじゃないんです。拾ったんです」
これは泥棒の常套句だ。
でも、これはある種の事実でもある。
初枝がこの擬似家族に寄り添ってこそ生きられたのも事実だと思う。

また、ネグレクトを受けている女児を拾って、擬似家族のようなものを形成していくが、2019・2020・2021年の本屋大賞作品は全て「擬似家族もの」が受賞しており、この時期の流行りだったと言えると思う。
祥太も松戸のパチンコ屋で車に放置されたところ、おそらくほぼ救出するかたちで柴田夫婦が拾ったんだと信代は言う。
蓋を開けてみれば、柴田家はほとんど全員血が繋がっていなかった。
でも、この家族が「家族じゃない」と誰が言えるんだろう?

「あたし、楽しかったからさ。こんなんじゃおつりがくるよ」
アキヒロ

アキヒロ