す

万引き家族のすのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.1
1聞くと100返してくれる父の偉大さと教養の深さに感謝した。たかがスイミー、されどスイミー、あの会話ひとつにおいてもその学の乏しさ、育ちが露呈してしまっていて、義務教育さえ疎かなまま歩んできた人生が窺える。そんな彼が唯一教授できた知恵が、盗み。それは彼らにとっての生活であり、生きていくための術だった。だけどその日暮らしを一生続けていくことは叶わないし、繋ぐ日々は実に脆く、儚くて。

終盤、最も手を差し伸べるべきときにそれをしなかったこの不条理な世が、熱を持たぬ事実だけで彼らを推しはかり、機械的な処理によってまた不条理な世に押し戻すだけというこの単なる作業でしかない構造がやるせなかった。だけどこれは誇張でもフィクションでもなくて、今ここにある現実。社会と法が変わらない限り、家庭という閉鎖的な場で逃れられず、苦しみ続け、救われない命は増えていくんだよな。もう事後のトラウマケアだけじゃ間に合わない。家族のケアをしていかなきゃ。

自分が今志している夢は少なからずこの現実を変える一手になるはずで、だからこそこの道は絶対に価値あるものだと改めて信じさせてくれた。ありがとう。がんばんなきゃ。
す