このレビューはネタバレを含みます
自分にとっては、嘘がない映画だったと思う。
映画を見ていると、好きな作品でも「ここちょっと違うな」「こじつけだな」「無理やりだな」と思ってしまい興ざめしてしまう事があるが、それが無かった。
客観的に見れば、歪な形の仮の家族。
それでも、本人たちにとってみれば本物の家族。
そう思いたい、いやそうに違いないとどこかで感じながら共に過ごしていたように思える。
治や、信代その他家族の「以前」はあまり語られていないので分からないが、みんな一般的に言われる「本物」の家族から溢れてしまった生い立ちを持っているのではないかなと予想して見ていた。
だからこそ、互いへの思いやりはあるが、人道的でなかったり、倫理的ではない言動が見られ、そこに歪みを感じるのではないか。
信代が終盤に発した「産んだらみんな母親になんの?」という言葉。
鈴の実の母親と信代、どちらが鈴を真に愛していたか、と聞かれれば間違いなく信代だろう。
それでも世間的、客観的に見れば鈴の母親は信代ではない。
事実とか、本物とか、
本質を捉えてなければそれは事実でも本物でもない。
それでも、世間の「一般的」によって引き裂かれてしまった家族。
素直に家族の関係が続けばよかったのにと言えない所に、嘘がない映画だということを感じる。
視聴者として、悲しみ、虚しさ、微笑ましさ、無数の感情を抱えたまま終わるこの映画がとても好きだ。