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万引き家族のsueのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.7
先行上映で鑑賞。

打ちのめされた。この家族に。

安藤サクラの母性。
リリーフランキーの父性。

そんな、あるはずのないものが胸を刺す。
情が通ったニセモノ。
「正しい人達」からの全否定に返す言葉もなく、悔し涙を流し、力無く笑う。
社会で生きることを学べなかった者たち。

不遇な子どもたちと出会い、昔の自分を重ね、彼等なりに護ろうとした。まだ幼かった頃の自分が誰かにそうして欲しかったように。このまま自分みたいな人間になってしまわないように。方法もわからないまま救おうとしていた。

何故だろう。
フラッシュバックも説名台詞も一切使ってないのに、炙り出しのように人物の過去や背景が浮かび上がる。

是枝裕和監督は観客を信じている。
観客自身が生きてきた人生が、その記憶が、あえて描かなかった部分を補完して、物語を完成させることを。こんなふうに映画をつくれる人は世界に何人もいない。

人目を憚るように生活する彼らの住処に聞こえる、花火大会の音。すぐ近くなのに観ることが出来ない。それでも縁側に集まり狭い空を見上げて笑う「家族」に、目が潤んだ。

窃盗に年金の不正受給に児童虐待。
テレビやネットニュースで流れているうちは他人事だった。人間のクズが、と貶していればよかった。

この映画を見たとき、それらを掌に乗せられたような気がした。そして気付かされた。

そこにはビー玉を光に透かして、世界や宇宙を空想する子どもたちもいることを。
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