nishikooo

万引き家族のnishikoooのレビュー・感想・評価

万引き家族(2018年製作の映画)
4.4
おばあちゃんの年金、父ちゃんの日雇い肉体労働の給料、母ちゃんのクリーニング屋パートの給料を合わせて、毎日もやしでも食べれば万引きもしなくていいのかもしれない。
だけどお菓子も食べたい、新しい服だって買いたい、夏には泳ぎに行きたい、嫌なことがあれば高い化粧品も買いたい。

それはクソみたいな扱いしかされなくてクソみたいな生活を抜け出せない中で、毎日に小さな楽しみを見つけなければ人間的に生きていけないから。

悲劇なのは、小さな楽しみを得るために払った代償は大きく、請求を突きつけられると返す能力は無いので、楽しい毎日が泡のように消えること。

富裕国の一つである日本、その中心である東京のネオンの影にある社会を突き放すでもなく、同情的になるでもなく真っ直ぐ映し出す。

程度の差こそあれ、隣の人やひいては自分にも遠くは無く、するりと滑り込みそうになる世界だということが最大のリアリティであり、それを繊細に捉えた稀有な作品だと思った。
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