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150ミリグラム ある女医の告発のakrutmのレビュー・感想・評価

3.6
糖尿病治療薬の重大な副作用に訴えるフランスの女性医師が、製薬会社を相手に薬害を告発していく姿を実話をもとに描いた、エマニュエル・ベルコ監督の社会派ドラマ映画。主役の女性医師イレーネ・フラションは実在の人物であり、彼女が2010年に出版した告発本が原作となっている。事件に関してはほぼ現実と同じであるが、彼女の協力者であるアントワーヌ・ル・ビアン教授は、グレゴワール・ル・ギャルという実在の教授がモデルになっているが、架空の人物である。特に、モデルとなった教授の了解を経た上で、ちょっと気弱な人物造型に変更されている。また、当時の厚生大臣が彼女を積極的にサポートしていたことは映画では描かれていない。

そういう意味で現実の事件そのものを忠実に描いているとまでは言えないが、それでも勇気ある行動を取った女医の活躍を印象的に描いている点で、内容的には地味ではあるが(まあよくある出来事と言えなくもないし)、この種の社会派映画が好みの人にはオススメできる作品である。イレーネを演じているのがフランスの女優ではなく、デンマークのシセ・バベット・クヌッセンであるのも面白い。この役に適する女優がフランスにはいないはずはないという気もしないではないが。なお、映画の中でもイレーナがデンマーク出身ということになっているが、実際のイレーネはデンマーク出身ではない。

・中年太りした体型のブノワ・マジメルが、プレッシャーに耐えられずトイレに閉じこもってしまう気弱な人物を演じているのは見どころかもしれない。

・症例対照研究の結果を発表した学会誌がプロスワン(PLoS ONE)なのに軽く驚く。オープンアクセスの学術雑誌なので、実際の論文(Frachon et al. (2010). Benfluorex and Unexplained Valvular Heart Disease: A Case-Control Study)を誰でもネットで見ることができる。

・後ろ姿だけではあるがイレーネ・フラション本人がカメオ出演していて、シセ・バベット・クヌッセンがイレーネと挨拶を交わすというシーンがある。
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