イチロヲ

続・拝啓天皇陛下様のイチロヲのレビュー・感想・評価

続・拝啓天皇陛下様(1964年製作の映画)
3.5
軍隊生活に生き甲斐を見いだしている一等兵の男(渥美清)が、敗戦の混沌状態に落とし込まれていく。前作のヒットを受けて製作された、シリーズ第2弾。共通するキャラクターを用いている、別物の単体作品。

本作では、満州統治時代と戦後混乱期を描写。「日本男児の精神(=天皇陛下への忠誠)」を重んじる主人公のジタバタ劇を、前作とは別シナリオで語り直している。当時の風景を再現した、丁寧な映像作りに関心が高まる。

帰還後のドラマは、主人公と亡き上官の妻(久我美子)の恋愛劇がメイン。軍隊で培われた能力と思想がネガポジの両方に作用するという、後の寅次郎の片鱗が見え隠れしている(山田洋次が脚本に参加している)。

主人公は天皇陛下に忠誠を誓っているだけであり、敵対国の人間が心底憎いわけではない。個人となれば、異国の人物とでも仲良くできてしまう。前作のインパクトは後退しているが、「その時代」を追体験するための人情喜劇としては、最良の出来栄え。
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