shun

ボリショイ・バレエ 2人のスワンのshunのレビュー・感想・評価

3.9
すすめられて観てみました。
トップバレリーナを目指す少女たちを描いたロシア映画

「バレエ」を題材にした映画ってたくさんあるけどロシアのものは初めてかも。そもそもロシア映画自体初めてだと思う

ボリジョイ劇場含めほとんどが実在する場所で撮影されている上に登場人物の多くも本職のバレリーナが演じている。

本物の劇場、本物のダンサー
では、「バレエ」を「映画」にしたのはなぜか?
ラスト6分ほどにその答えがあったと思います。楽屋でのスローな主観映像の後に舞台をバレリーナの後ろから撮って終わる。
この映画は華やかに光り輝くバレエの世界の裏側を少し覗かせてくれるものです。
楽屋での様子や観客席とは反対側から舞台を見ることなど私達にはほぼあり得ない。美しさの裏の葛藤や競争など人間的な部分を垣間見れた気がします。

「もう夢物語じゃない」というセリフがありましたが、これがプロになるということなんだろう。夢でどこか遠い存在だったものが現実になる瞬間。それは決して輝きだけじゃなくて、ややこしい大人の事情や上手くいかないことだってたくさんある。
きっかけは自分の意志では無かったにしてもユリアがバレエに魅せられ世界最高峰の舞台を夢見た事実は無くならないしプロになっても変わらない。
どんな事でも理想と現実の差というのはどうしても生じるけどだからこそそこにどれだけ情熱を持つことができるかが重要なんだろうな。そしてその情熱が感動として私達に伝わる

ユリアとカリーナ、正反対に見える二人の絆もとてもよく描かれていました。一生のライバルであるにも関わらず人生の中でも殆どを共にする二人。
生まれ育った環境は違くてもバレエを通じて成長し競争した名前のつけられない関係。
他の登場人物もみんな綺麗でした

個人的には先生が好きだった。誰にでも訪れる「老い」に加えてバレリーナだった頃の身体的負担からくる影響もあるんだろうか。イヤリングに気付いちゃった時の表情が悲しい

映像がとても美しかったです。特にカリーナのリハーサルシーンとラスト。長回しも多かったしもちろん生とは比べられないけど映画の映像としてとても惹きつけられた

出てる人も場所も美しいんだけどそれ以上に「バレエ」というものの華やかさと過酷さが二人のストーリーの上に描かれていて、フィクションを超えて改めてこの芸術について知ることができる映画だと思います
shun

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