ベルサイユ製麺

夏、19歳の肖像のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

夏、19歳の肖像(2017年製作の映画)
3.1
最近の中国映画お馴染みの、製作関連会社のロゴパレード!見知らぬ”堂々とした物”を次々と見せられると、こっちが知らないのが悪いような気がしてますね…。

元EXOのタオ主演のミステリーでございます。


バイクで疾走する青年、19歳の大学生カン・チャオ。先行車の積荷が崩れ落ち転倒、足を骨折(顔は無事!)しそのまま入院する事になります。
カン・チャオの入院を知るのは、2人の友人だけ。退屈したカン・チャオが、病室の窓から向かいの病院の拡張工事の現場をボンヤリ眺めていると…その隣家、豪邸に美しい女性がいる事に気付きます。一目惚れしたカンチャオは2人の友人に頼んで望遠鏡を貸してもらい、日がな一日彼女の事を眺めています。(※通常、覗きは犯罪ですが、イケメンなので全く問題ありません)
ちょうど同じ頃、カンチャオの利用する中華系SNSに話しかけてくる正体不明のアカウントが現れ、彼は面白半分にコミュニケーションを取るようになります。

…ある雨の夜、彼女の家を覗いていると
《彼女とその母が、父と何やら揉めている
。一度は落ち着きたように見えたが、彼女が後ろから父を…!》


これは…なんだか凄く変わった物を観ているような気がしてきましたよ?

非常に典型的なミステリーの導入です。裏窓チック天国と言っても良いでしょう。
ストーリーの鍵になるのは“ある殺人事件”なのですが、それ以降殺人が連鎖するでも、怪人物に命を狙われるわけでも有りません。謎と恋心が絡み合う、ホントのホントに純ミステリー的な雰囲気。…日本や韓国では多いジャンルですけど、中国映画で現代劇のミステリーって、しかもイケメンの若者が主演って珍しくないですか?
…ピンとこないですかぁ?そうかぁ…。

作品自体の雰囲気は、味付け薄めの韓国映画、或いはズバリ、昼間に再放送してる推理ドラマのようです。そして、あんまり面白く感じられない…。まあ、主役がイケメンなので全く問題ありませんがね。グッフッフ。
この作品、なんというか、魂を搭載し忘れたかのような空虚感が濃厚に漂っています。イマイチ登場人物の行動原理が理解し難い。ミステリーのトリックってあくまで装置にすぎないので、普通はそれを力強く稼働させるための人間ドラマが必要なはずなのに、どうにも強い意志のようなものが見えてこない。いや、そもそも主人公がイケメン過ぎて全く感情移入出来ない。
何より致命的なのは、肝心のトリック・種明かしが全くピンと来ないのですよ。一応筋は通ってるのかもしれないけど…。
例えとして通用するか分かりませんが、まるで、“弟切草”とか“かまいたちの夜”みたいなサウンドノベルの、やり尽くした挙句出てきた巧くも無ければ笑えもしないカス・シナリオみたいな感じなんですよね。なっとらん!
これは駄目!中国映画の独特の制作マナーの問題も有るとは思いますが、やっぱりせめてちゃんとした原作のある物でもやった方が…

…ん?原作、島田荘司?
あ、そう。

いやあ、彼はなかなかのもんですよ!…気立てが良い!…あと、コーヒーをおいしそうに飲むやね。画数もまずまずなんじゃないかな。


と、徳利、いやトリックにびっくりしました!いやあ、ほんと、ねぇ…。いやはや…

おっと、そろそろ出掛けないと自転車に乗り遅れちゃうぞ…
〔Fade Out〕