gogotakechang

ラジオ・コバニのgogotakechangのレビュー・感想・評価

ラジオ・コバニ(2016年製作の映画)
3.8
大林宣彦監督は「どれだけ戦争をリアルに描いても本物に比べれば描き切れるものではない。ならば世の中で一番の大ウソ"平和"を映画というウソで描くことで、そのウソを"マコト"と信じる人が少しでも生まれれば良いと思って映画を作り続けてきた。」といった事を、いろんなインタビューや講演で話している。

『ラジオ・コバニ』はドキュメンタリー作品である。映し出される映像は、おそらくほとんど演出を加えられていないものだと思う。死体を掘り起こすシーンなどはあまりに無造作で、飲み込むのに時間がかかってしまう。それよりも、爆撃で建物の全てが崩壊し廃墟の街となったコバニの空撮が東北の震災を彷彿とさせ、それが天災ではなく人為的な"戦争"の痕跡であることに驚異を抱いてしまう。

大林宣彦監督は更に「天災は止められないが、戦争は人が始めるものだから止めることができるはずである。」

ワタシも映画はウソから始まっていると思う。だから凄まじい映像が真実かどうかなんて関係ない。要は、戦争がいかに無益で非情でバカげているかが描かれていれば良いと思う。そしてその瓦礫の中にも、敵味方の区別なく"生活"と"人生"が存在していたことが伝われば良いと思う。

この映画はその宿命を背負って世に生まれ出でたはずである。
だとすれば、もっと鋭角な作りでも良かったのではないか?

だって映画なんだから。
gogotakechang

gogotakechang