にゃんこむ

アルファ碁のにゃんこむのレビュー・感想・評価

アルファ碁(2017年製作の映画)
3.9
アルファ碁とはGoogle DeepMindによって開発されたコンピュータ囲碁プログラムのこと。
2015年に人間のプロ囲碁棋士とハンディキャップなしの対戦で初めて勝ったコンピュータープログラムとして有名になりました。

これは、『囲碁でプロに勝つという目標を持ち、実際に偉業を達した技術者達』と『囲碁のプロで囲碁を業としながらもプログラムに負けてしまった人々』の明暗を描いた作品です。

将棋なんかは、ファミコンの時代からNPCが相手になって対戦できたりしましたよね。囲碁のファミコン版が出ていたかは知りませんが、少なくともスーファミくらいでは出ているはず。そう考えるとただ囲碁を打つソフトというだけではなく、『プロに勝つ』というハードルがいかに高かったかが伺えます。
囲碁は基本的なルールくらいしか知らず、最初から最後までプレイしたことは一回も無いのですが、非常に複雑で戦略的な思考を必要とするボードゲームだそうです。
チェスなどと比べて石を置く選択肢がはるかに多く、闇雲に検索するだけではコンピュータは勝てないと思われていました。
けれどもAI技術が発達し、プログラムが自分自身との対局を何万回と繰り返す事で学習し、強くなる仕組みが出来たことで、その強さは飛躍的に上がります。
このドキュメンタリーを観ていて驚いたのは、アルファ碁の開発チームがなぜアルファ碁がその手を打ったのかまったくわからないのです。プログラム上のミスなのか、戦略なのか、開発者にもわからないって、何だか恐ろしささえ感じます。
技術がもっと進化してアルファ碁が導き出した答えの根拠を示せるようになると面白いのになぁと思いました。

この作品の面白いところは、ただ凄い機械を紹介するだけではなく、機械に敗れてしまったプロの心情や悲壮感が漂うところです。
勝つものがいれば負けるものがいる。
たかがコンピューターのプログラム。それに負けてしまった自分の存在意義とは……?

さらには、一度負ければコンピューターはそれを分析し、もっと良い手を考え出します。
人間が寝ているときにも食事をする時にも、信じられないような回数の訓練をこなし、もっともっと強くなる。
そうなると人間の勝ち目なんか無くなってしまう。もう絶望的です。
囲碁だけではなく、今後もプログラムに負けるジャンルが増えてくると思います。
そうなったときに、人間はどうするのか自分達はどうするのかを考えられる良作でした。
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