Ginny

天才作家の妻 -40年目の真実-のGinnyのネタバレレビュー・内容・結末

3.1

このレビューはネタバレを含みます

映画の大まかな展開は邦題が完全にネタバレしていますが(苦笑)、その所謂「40年目の真実」をこの夫婦が、ノーベル賞を受賞した夫ジョゼフが、支えてきた妻ジョーンが、どう取り扱っていくか。見応えがありました。

ノーベル賞受賞という脚光。強い強い光を浴びれば、その分影が濃くなるのだと思わされました。
このアプリに投稿するほとんどの人は一般人でしょうからその苦労を知り得ないでしょう。
脚光を浴びた人を匿名で叩いたりわかった風に批評したり、人を人と思わず情報として消費していく人の方がここには多いのではないでしょうか。

この夫婦は、世間一般の夫婦と同様にこの二人にしかわからない苦労や葛藤を抱えながらここまでやってきた。
それがジョゼフ・キャッスルマンの作家としての伝記を書きたいというナサニエルという記者が大きく歯車を狂わせていく、と感じました。

このナサニエル、私は苛ついて仕方なかったです。
何の権利があって他人のプライベートを踏み荒らして良いのでしょうか。
真実なんてどこにもないと思っています。それぞれの見る角度が異なるので何が真実かとは問えない。
ナサニエルとのバーでのジョーンの受け答え方。のらりくらり交わしながら、激昂せず、優雅で素晴らしかった。彼女の気質、そしてそれが文才としての素質。

ジョゼフの初期の小説の初稿を読んだ時のジョーンの感想、作品として作家として足りない部分が、時は経ち、ノーベル賞でジョゼフの作品の評価の総評として賛辞を受けていたことが皮肉でしたね。
今までの功労がジョゼフのものでなくジョーンによるものだとわかります。

でも、それでも、その現実から抜け出さず、それを40年続けてきたジョーン。
抜け出せなかった。それがここにきて爆発してしまった。

今までの現実がガラリと変わる状況で、色々と振り回され限界がきてしまった、その心の内は慮れます。
脚本家は女性。だろうな、と思ったらそうでした。でしょうね。
男性のデリカシーのなさ、鈍感さ、年数を重ねて積み重なった愚鈍さに辟易。これを見ていると結婚したくねえええええええええええええええええええええええと心の中で思いました。

それでも、ジョゼフが急に心臓発作を起こして、そんな状況なのに、もう離婚すると限界がきているジョーンに対して「僕のことを愛してる?」と今際の際で聞く馬鹿さ加減がもう一周回って、愛らしさ?それが愛なのかもしれない。え?愛って何?

その前のシーン。ジョゼフが聞いた、じゃあなぜ僕と結婚したのか、の問いにジョーンが答えた「わからない」がとても腑に落ちました。
樹木希林さんが、「結婚なんてのは若いうちにしなきゃダメなの。物事の分別がついたらできないんだから」というのがずっと印象に残ってるので、そんなもんだよなあと思いました。

よど号ハイジャック事件で機長として奮闘した方が、事件終了後関係のないプライベート情報をマスコミに荒らされ、その事件がなく脚光を浴びなければ歩まなかったであろう渋い道を歩んだのに絶句したのですが。
そういうマスコミとか、そういう週刊誌とか、そういうものを手を伸ばして読む大衆とか、反吐がでるんです。

評価されたグレンクローズの演技、素晴らしかったです。揺れる瞳、動揺が見て取れるけど外では取り乱さないよう努める気丈さ、それが限界に達した時。惹きつけられっぱなしでした。
あと、不穏な音楽が好きでした。ジョスリンプークという方。アイズワイドシャット見たのはかなり前ですが確かに音楽良かった気がする、記憶が曖昧だけれど…。

GOTヴィセーリスのキレっぷり爆笑です。明らかやばい。
Ginny

Ginny