紫のみなと

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドの紫のみなとのレビュー・感想・評価

4.3
公開時映画館で見終わった後、ラストシーンの暴力の場面にかなり気力を搾られたのと、シャロン・テイトにまつわる結末に、何というか深淵をのぞいたような余韻があって、積極的に2度目を観ようと思いませんでした。
が、数年ぶりに2度目に鑑賞してみると、2時間51分もあった⁉︎と思うほどあっという間で、所々声を出して笑ってしまうシーンもあって、こんなに観やすい映画だったかな?と思いました。
個人的に、暴力が描かれたシーンや映画が苦手で、年々そういう傾向は強まっていますが、今回くだんの暴力シーンに「わ、最高…」と思った自分に驚きました。ブラット・ピットとレオナルド・ディカプリオ(と犬)が殺した相手は人間ですが、タランティーノ監督が殺し、焼き尽くした相手は人間ではない何かだったんだろうなと。

自分はこの映画の時代にもちろん生まれていないしアメリカの歴史に精通している訳でもないですが、タランティーノ監督は本当にその時代の空気や「存在」を描いているなと、そんな監督がいて、そんな映画が存在するアメリカ映画にはほんとに敵わないなと思います。

シャロン・テイトを演じるマーゴット・ロビーのシーンは全てが大好きです。いつもハッピーで音楽にノッテる姿もめちゃくちゃ可愛い。私はシャロンの映画は観たことないし、特別ファンでもないですが、夜に浮かび上がるシャロンそっくりの美しい横顔のアップから髪に手ぐしを入れるスローモーション、シャロンが幸せそうにしている全てのシーンがかけがえが無い。
黒ハイネックのロングスリーブに白のミニタイト、白のブーツ、ゴールドのチェーンのショルダーバッグ、片手にトーマス・ハーディの「テス」を持って映画館に歩いていくシャロン・テイトが、実際に近いのか全てタランティーノ監督の創造なのかは分かりませんが、なんてすごいシーンだろうと思います。

そしてなんといっても主演の2人なのですが、私はディカプリオとは同年代なのでディカプリオが最も美しい頃をリアルタイムで観ていますが、一度も興味を持ったことがなく、ブラピにしても、特段いいと思ったことはありませんでしたが、ブラピに関しては歳をとってからの彼の主演作を見るうちにすごくいい俳優になってると(2人とも昔からいい俳優には間違いないですけど)、目を見張ったことがあり。
今回、リック・ダルトン役のディカプリオはディカプリオの持っている才能が全部出ているんだろうなと思えますし(完全なアルコール依存性だと思いますが観客に嫌悪感を与えない)クリフ・ブース役のブラピに関しては、いっぱいありますが、特に、アンテナを直しに屋根の上に登って上半身裸になるシーンには思わず、ブラピが美しく生まれてきたことに神に感謝したいような気さえしました笑
犬に餌をあげるシーンがあんなにきまる人って他にいるでしょうか。
ブラピのキャラクターは一言でいうととてつもなくいい奴だと思いますが、そこに悲しみや強さも含まれ完全にリアリティのある演技で最高でした。リックのスタントマンとして、相棒として、リックの影になってリックを救ってきたクリフ。2人の友情がまた、泣けてきます。

最後の場面、ポランスキー邸に招待されていくリック、大きなお腹のシャロンとその友人たちの姿を上から眺めるショットからのエンドクレジットに、この映画が大好きだと思いました。