ひれんじゃく

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのひれんじゃくのレビュー・感想・評価

3.7
60年代ハリウッドや例の事件を知らないまま観たので知識不足を痛感するシーンも多数。でもとにかくクリフの沼が深いことは理解した。深い。深すぎる。底なし沼すぎる。俳優として表舞台に立つリックとは真逆で、撮影の間はアンテナ直してたり事件の時はリックの代わりにあんなことをしたりとどこまでも「リック・ダルトンのスタントマン」として生きてるのがやばいし一周回ってつらい。正直タランティーノの映画は会話シーンが多く起伏も乏しくわたしには合わないかも……?と思ってた矢先にあのラストなのでクソ満足した。レザボアドッグスとかパルプフィクションとか今見直したらあのときわからなかったことが拾えるようになっているのかもしれない。

以下ちょっとネタバレ。




















まあクリフのブルース・リーを馬鹿にした言動とかは自業自得だしあのシーン正直好きではないけど、それはさておき人から指をさされながら罵られるときのあのポツンとした背中がつらい。本人はそんなに気にしてないのかもだけど。

俺はもうダメだなんだと言いつつ、映画の中で映画を撮る二重構造の中で二重に演技をしてるディカプリオのシーンも好き。あそこで一気に西部劇の悪役としての面しか見えなくなって、セリフを間違ったところで初めてリックに戻ってくる感がすごかった。あんな感じでいつも現場は回ってるのかなあ。撮影の時空気がピンと張り詰めるのを画面越しながらに感じられた。というか映画やドラマはカメラやその他外にいる存在を一切匂わせず、人間の演技で成り立ってるのまじすごいな。それをしみじみと、今更ながらに感じた。

観終わった後アレコレ調べて、再構築した現実の中にメチャクチャオリキャラをぶち込んで大改変したタランティーノの勢いに笑うと共にフィクションの良さみたいなものを感じた。そうだよな!!!フィクションくらいはこうなったっていいよな!!!シャロンは死ななかったっていい!!!!!現実をなぞらなくったっていいんだよな!!それこそフィクションなんだから!!と。実際の映画史で起きた悲劇を映画によって書き換えるってのがすごく愛が溢れてていいなあと思った。まあそれでも救われなかった男が1人いるんですけどね…あのあとどうなっちゃったのクリフは………ブランディがとかく有能すぎて全て解決してたのも好きです。えらい。飼うべきはピットブルだが飼い慣らせるのはクリフくらいしかおらん。
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