コータ

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのコータのレビュー・感想・評価

5.0
【ATB第3位】
〈創造<想像>に生かされて〉
アバンタイトルが終わり、現れる黄色い文字のタイトルバック。“かつて、夢と青春の街・ハリウッドにて…”

ユーモアあふれる無駄話、バックに流れる既成楽曲、ポップカルチャー愛、過激バイオレンス、やりすぎ復讐劇、歴史改変。
タランティーノ作品の要素がすべて詰まった集合体的作品。

リックは落ち目の俳優で、クリフは彼の付き人スタントマン。2人の友情は堅くて美しい。ディカプリオ&ブラピが1969年のLAにて、マンソンファミリーと対峙する。そこにヒッピーやシャロン・テート事件が絡み合う。
作中にはゆったりとした時間が流れ、最終的に大事件が起こるでもない訳だが、それはそれで芸術であり、平和で牧歌的な休日映画なのだと思えばよい。『アメリカン・グラフィティ』ハリウッド1969ver.。

♪Out of Time/ザローリングストーンズ
の曲に乗せて街のネオンサインが灯されていく場面の多幸感といったら…♥️

メシ、酒、タバコ、ドラッグ、車…
映画、テレビ、本、音楽、ラジオ…
幾つもの刺激と日常の平穏。大衆娯楽であり、人々にとっての生きる糧。
それを創る者、表現する者、享受する者…
モノ作りへの憧れと継承。エンタメ賛美。


『イングロリアス・バスターズ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』に続く、歴史改変三部作の三作目。

物語で史実の汚点を塗り替えてしまう。
実際問題、犠牲者の末裔による復讐なんてものは、次なる争いを生み出すだけで、問題解決をさらに遠ざけるばかりか、犠牲者の心の傷を癒すことさえできない。そんなジレンマをフィクションの物語と映画的カタルシスでもって晴らしてくれるのがこの三作。
映画の世界において、映画はどんな相手にだって勝利し得る。映画そのものをモチーフにした『イングロリアス・バスターズ』では、これをより直感的に、よりパワフルに感じられるはず。

タランティーノは映画の力を信じている。
だからこそ、毎回最高の映画体験を用意してくれるのだろう。
コータ

コータ