シネマスナイパーF

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

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ラブレターを書かせたら世界一の男、タランティーノ
短すぎる
永遠に観ていたい、そんな映画
一夜明けても覚めやらぬ恍惚


マカロニ最盛期とアフリカ系アメリカ人の市民権運動の一瞬の時代の重なりに深い味わいを感じさせる"南部劇"「ジャンゴ 繋がれざる者」を撮ったタランティーノが、動かざる現代史を撮ったらどうなっていたかは「イングロリアス・バスターズ」でも実証済み
そして、満を持してレオ様とブラピが共演した今作は、映画の代名詞ハリウッドへの最高のラブレターだった
綺麗事が時代遅れになってきているハリウッドや、まさに今向かおうとしている不毛なベトナム戦争に抵抗し狂乱しているヒッピー、そんな中、アメリカのお家芸西部劇が異国の地でダーティな内容で大ウケしていた…


お隣さんがあの方々、って時点で100%不穏
クライマックス何が起こるのかは予想がつく
という最強のクリフハンガー
約束された緊張感の中で、リック・ダルトンとクリフ・ブースをはじめとする登場人物の人となり、もっと言えば現状が描かれる

切羽詰まっているリックの生活は答え合わせ形式で描かれ、カメラマン視点での撮影現場のシーンは非常に楽しく、あまりに単純すぎる性格が子役というあまりに単純すぎる要素によって効果的に引き出されているね
一方のクリフは、スタントマンとしての体術披露はもちろんのこと、投げっぱなしな怖い噂があるからこそ、コミューンでの一挙一動に緊張感があるし、クライマックスのミスリードにも繋がっている

所謂、映画の展開的には意味のないパートはシャロン・テートの一挙一動だと思う
少なくともラストまで男二人組と直接絡むことはない
しかし、この何気ない一見無駄な場面の数々も、タランティーノなりのラブレター
実際の事件を扱っていることが、おとぎ話であると同時に最高のラブレターである何よりの証拠
タランティーノにとって、本当に幸せだったあの時のあの場所の幸せが壊されずに続くという幸せがそこにはある


ディティールのこだわりは非常に出来のいいパンフレットを読めばよい
ちなみに、シャロン・テートがウキウキで観ている出演作サイレンサー破壊部隊はチャック・ノリスのスクリーンデビュー作でもある
160分が短すぎると感じる幸福感を逃してはならない