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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのmitzのレビュー・感想・評価

3.5
1969年ハリウッドで起きた「シャロン・テート殺人事件」をベースとし、実在する人物や出来事と2人の架空の主人公によるミクスチャーフィクションです。
「金のかかったB級作品」としてタランティーノ作品は認知度も高く、すでにブランディングに成功しています。今作はその最たる物です。1960年代後半の転換期に入るアメリカンカルチャーを細部にまでこだわり、映画オタクとしての自己愛を爆発させています。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの共演だけでどんなシーンも成立させてしまい、いちいちカッコよく、わざわざ粋に感じます。そういう意味で化粧回しは完璧に近い作品です。
それに対してストーリーは物足りなさを感じます。(個人的にチャールズ・マンソンやチカチーロの類を啓蒙し「シャロン・テート殺人事件」にも関心があるため)必要以上に長い長いネタフリがあり、その悲惨な史実を最終的にどのように咀嚼するのか?が中盤以降の争点とした場合、美談に傾倒する余り精神的勃起を逃してしまいます。いつもの血しぶきバッシャーン!爆発ドッカーン!の大円団を期待する層にはやや肩透かしです。
逆に言うと、作品の中でハリウッドの黒歴史を書き替えることがタランティーノ流の勧善懲悪であり復讐かも知れません。脚光を浴びる前に死んでしまったシャロン・テートが、映画の中では自分が出演する作品を鑑賞する姿にタランティーノの深い映画愛を感じます。

「きっとこんなハリウッドもあっただろう」というおとぎ話です。
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