藤見実

男と女、モントーク岬での藤見実のレビュー・感想・評価

男と女、モントーク岬で(2017年製作の映画)
5.0
傑作。人生は後悔が核になる、そうでしょ。

中年の男女の恋愛モノではあるのだが、観ている側はなにも期待に胸踊らされることがない、上気した頬など望めもしない、北欧らしい? 寒々とした色調に映える色などなにもない。無機質。

人間のどうしようもなさ。アシスタントの女の子以外が全員イヤな部分をもっていて、それが全部行動や表情というよりは台詞に載るのが面白いなと思った。わたしも性格が悪いので、やつら、言葉に生きてらあ、と思ったことをこうして言葉に載せておく。



小説家の男、なにも責任を取れずフロウに生きていて、女をいたるところで傷つけている、傷つけているのだが、傷つけたくはないと思っており、しかし、フロウに生きていることそれ自体を悪いことだとは思っていない。最後の飛行機の中での表情に一種の感慨が潜んでいて殴り倒したくなるようででもそれは人間らしさだしぶっちゃけ魅力なので許すしかない。フランス語で喋る金持ちのお爺さんのフランス語で話すことのイヤミ。クレーの絵を持っているのが全く素敵に思えない、いやらしい。女たちもそれぞれ本当にイヤなところがあり、みんなサイテー。


オープニングのクレジットの出し方がめちゃめちゃカッコよかった。飛行場に着陸してタクシーを取るところまでの音声が流れて、そこにシルビアビュッフェの絵みたいな白に黒の線が動く橋のようにガシャンガシャンなる。ニューヨーク! と思わされる。

個人的にモントーク岬に行く間に坂を下る車を遠くから撮ったショットがベタだけどよかった。

ネコ〜ネコ。ネコ

ディランをかけながら昔のエネルギーを今に回帰させようとする中年男性にドライブシーンを観て欲しいね。浅ましい、浅ましいけど仕方ない、でもそれ、カッコ良くはないよ。


マックスリヒターがもっとも映える映画だと思う。ぴったり。
藤見実

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