【どっこいおいらは生きている】
ナチ時代のベルリン。市内のユダヤ人は一掃されて一人も残っていない、と宣伝相ゲッベルスが宣言したにもかかわらず、実は数千人のユダヤ人がひそんでいました。
という実話を元にした映画。実際に生き延びた人が登場して過去を回想するドキュメンタリー部分と、彼らが実際にナチ時代にどうやって暮らしていたのかを若手俳優が演じる部分とに分かれています。
これを見ると、生き残るための方策は様々であること、ユダヤ人をかくまってくれたり、そうと知りながら黙って雇用してくれたりしたドイツ人がそれなりにいたことが分かります。
特に国防軍の高級軍人(大佐)がユダヤ人女性をそうと知りながらメイドとして雇用していたというエピソードには感慨のようなものを覚えました。ナチ時代、ナチの軍隊である親衛隊と、ドイツという国家の正式の軍隊である国防軍との関係にはなかなか複雑な部分があったようですから。
昔は、ユダヤ人狩りをしたり強制収容所でユダヤ人を虐殺したりしたのはナチの親衛隊であり、国防軍は連合国との通常の戦争を戦っただけだと言われていました。
しかしその後、実際には国防軍もユダヤ人虐殺にかなり加担していたことが分かってきたのです。
けれども、軍内部にも当然ながら色々な意見があるわけで、この映画を見ると、ユダヤ人差別に内心批判的な心情を抱えていた高級軍人もそれなりに存在していたということが分かるわけです。
むろん、市井のふつうの人間がユダヤ人をかくまってくれるケースもあった。
改めて、人間の多様性について考えさせられる映画と言えましょう。