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ヒトラーを欺いた黄色い星のバナバナのレビュー・感想・評価

ヒトラーを欺いた黄色い星(2017年製作の映画)
4.0
ドイツでは戦時中、ナチスによりユダヤ人は全員強制収容所に送られた、となっていますが、実際は全国に7000人程潜伏し、終戦までに1500人程の方が生き延びたそうです。
本作は、2017年にそのことをドイツで放送されたテレビ映画らしいです。

構成的には終戦まで生き残った4人のユダヤ人男女の若者の周辺が描かれています。
そして2010年頃にご存命だったご本人たちの証言の映像も、ところどころ解説の様に差し込まれています。


メインの一人、20歳のツィオマ・シェーンハウス(男性)。
両親は強制収容所に送られたものの、自分は一か八かで偽身分証を作ったらそれがバレなかったので、収容所行きを免れます。
そして彼の噂を聞きつけた高級官僚からユダヤ人の偽造身分証をつくる仕事をもらい、何とか生き延びていきます。

2人目は16歳のオイゲン・フリーデ(男性)。
彼は母親がドイツ人と再婚していたので収容所行きを免れていましたが、オイゲンは服にユダヤ人の証である黄色い星のワッペンを付けさせられ、ゲシュタポにマークされます。
彼の身を案じた両親から匿ってくれる家を宛がわれて、最終的に貧しいけれど反ナチスだったヴィンクラー一家に匿われます。

3人目は17歳のハン二・レヴィ(女性)。
両親は強制収容所に送られてしまいましたが、彼女は書類上のミスがあったのか親と一緒の収容所行きを免れたため、家を捨て、親の知り会いのドイツ人女性の家に身を隠しますが、そこが密告され、路上で暮らしたりと点々とします。

4人目は20歳の医者の娘、ルート・アルント(女性)。
彼女の一家は収容所へ行かされる前に、家族バラバラになって潜伏します。密告が多かったので、彼女も路上で暮らした時期もあった様ですが、最終的にドイツ国防軍のヴェーレン大佐の邸宅でメイドの仕事にありつけ、衣食住には困らなかった様子。



ツィオマはこの中で一番バイタリティがあり、ベルリンにも空爆が増え、自分にゲシュタポの追手が迫った時に、自転車でスイスに向かい、無事国境越えに成功して、戦後はスイスで暮らしたそうです。

ルート・アルントが世話になった国防軍の大佐は、戦時中の統制下で密かに闇食料を扱って儲けていた人だったそうですが、それでもルートがユダヤ人と知ってて雇ってくれていたので、シンドラーみたいな人でしたね。

それに比べてハン二・レヴィは、母の友人の家が密告でバレてしまった後は、どの様に生活していたのかがイマイチはっきりしない。
だって、映画の中ではずっと小奇麗だったので、体も臭わなそうだし、映画館に行く金もあったし、路上だけではそんなに長く暮らせないだろうから謎でした。
あの、映画館の受付親子と知り合ったのは、意外と早かったのだろうか?

そしてオイゲン。
彼も潜伏先を転々としますが、最終的に引き受けてくれたヴィンクラー一家は決して裕福ではなく、家も2部屋しかないような貧しい家庭。
途中、ツィオマの連れだったヴェルナーが一度ゲシュタポに捕まり収容所送りになっていたのだが、なんとそこを恋人と脱走し、ヴェルナーもヴィンクラー家に転がりこんでくる。
そして、ヴェルナーの口車に乗って、ヴィンクラーさんはゲシュタポ批判のビラを撒く活動まで初めてしまうのだ。
最初、主人だけでなく奥さんも反ナチで凄い家庭だなと思っていたけれど、さすがにこんな声高に反戦活動を始めたらゲシュタポに捕まってしまう。
ヴィンクラーの奥さんが怒ったのも分かるわ。
案の定、ヴィンクラーやヴェルナーは捕まってしまったけれど、彼らは収容所に送られてしまったのだろうか?
終戦までもうすぐだったのに、あのタイミングで…。
正しいことではあるけれど、もしあの時期にあの行為で命を落とされたのだとしたら、残念でならない。
奥さんの心配、当たってもうたやん😢。

…と、全て中身が100%実話で出来ています。
ナチスに反対して、自分も命が危険になるのにユダヤ人を匿ってくれた市井のドイツ人がたくさん居たんですね。
事実は小説より奇なりでした。
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