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ヒトラーを欺いた黄色い星のmitakosamaのレビュー・感想・評価

ヒトラーを欺いた黄色い星(2017年製作の映画)
3.6
ナチス政権下のドイツで収容所送りを逃れ、生き抜いた4人のユダヤ人の証言と再現ドラマで形成されるドキュメンタリー。

同朋の身分証明書の偽造を繰り返し食料配給券を手に入れていた男。
金髪に染めドイツ人に成り済ました女。
ベールを被り未亡人に成り済まし、映画館で暖を取っていた女二人。
ツテを転々と彷徨ったあげく、ナチスの制服を着て反ナチのビラ配りをした男。

アンネの日記の様にゲシュタポの目を逃れ潜伏生活をしていた者たち。
生き延びれたなりの頭の良さや気転や運もあったのだと思う。

その中でも身分証明書の偽造は面白いエピソードだった。ヘマをすれば身の危険に及ぶが、偽造行為そのものが楽しかったと告白していた。

またアメリカに渡った女は、講演等で「ドイツ人にも助けてくれる人がいた」と必ず言っているそう。
また劇中には、家族を人質に取られナチスのスパイ活動をしているユダヤ人もいて、同朋を売っているという話もあった。
ナチス政権下でもドイツ人にも善人はいたし、ユダヤ人にも色々いたと説明している。

実はこれをちゃんと描いているホロコースト系映画って少ないのが現実だ。
基本はユダヤ系の資本で作られる映画なので、ナチスを断罪しユダヤの悲劇を謳うのは当然。別にナチスを擁護する気もない。
でも映画の性質上、どうしてもドイツ人とユダヤ人を平等に扱う事が少ない。ドイツ人全般を卑下して扱う事も少なくない。

その意味では、この映画は生き延びたユダヤ人の生の声を採用しつつも、極めて中立的な立場で事実の再現を試みた作品だと思う。

だからこそ邦題はナントカならなかったのか?
“ヒットラーを欺いた”訳じゃないじゃん!
“ナチス政権下を生き延びた黄色い星”でしょ!
映画自体が歴史的事実を極めて真摯に受け止めた作品だけに、その事実を捩じ曲げて発表するのは、この映画の本質を最も理解していない仕事だと思います!
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