かんなこ

グッバイ、リチャード!のかんなこのネタバレレビュー・内容・結末

グッバイ、リチャード!(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

よくある余命宣告された主人公の感動物語、では無い‼︎
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prime Videoで無料期間が終わろうとしていたので滑り込み視聴。観て良かった。
この映画、よくある余命残りわずかの主人公が人生を振り返りながら終わりと向き合っていく感動ストーリー、を期待して観ちゃ駄目ですね。むしろ対極の存在だと思います。人生そんなに甘くねーぞ、とこれでもかというくらい叩きつけられます。
そういった意味で期待を裏切られて良かったです。

観終わった時、最初に思ったのは「リチャードの言ってることなんも響かなっ!!!」です。何この映画、薄っ!って。

でもこれもよく考えると意図されている事なんですが、そのバランスがめちゃくちゃ秀逸です。そこに本作のメッセージがギュッと詰まっていると思います。
以下感想を踏まえた私なりの解釈。

今作の特徴としてまず、リチャードの過去を徹底的に描かない事が挙げられると思います。リチャードが英文学の教授って事と、そこそこ稼いでいそうだという事くらいしか観ている我々は分かりません。どのような経歴があって今のポジションにいるのか、とか妻との出会いであるとかそう言った話は全く描かれません。他の登場人物とのやり取りにおいても基本的に焦点に当たるのは余命宣告後の話なので、会話の中でリチャードの過去を深く知る事もありません。なので視聴者からすると、「なんか経歴はありそうだけど、中身はよく分からないただのイケおじ」止まりなんです。周りの人間が彼をどう評価しているかも基本的には分かりません。基本的には余命宣告後の彼に対する評価になります。
だから彼に対してなかなか感情移入ができません。ジョニーデップという事以外は。笑

そしてそれがなんだからよく分からないまま最後まで続きます。なので色々と死と向き合う事で気付いたり悟った事をツラツラと色々語るのですがイマイチ響きません。どんな人間なのかをあんまり知らないから。深みがないから。

そして「これが現実だわな…」と悟る訳です。

それが今作の最大のメッセージなのではないかな、と思います。

作中にもそういう登場人物の配置があります。印象的なのは彼の講義を受けると決めた数人の学生達。講義の場面は多く出てきますが、リチャードと学生達の絆が深まっていく様子を詳細に描いている訳ではありません。当然彼の実力に感化されたり個人の利益で親密になる生徒も出てきますが、そこはあまり重要ではありません。結局半ば投げやりな講義を1学期受けた生徒の中には、最後のリチャードの渾身の人生講義に対して、「それだけ?」と漏らす生徒がいました。

これが現実ですよ、と。

つまり時すでに遅しなのです。人生が残り僅かだと知る。そこから今までの人生を振り返り後悔し何かをしようとしても成し遂げられる事は少ないという事なのです。痛烈な現実です

だからそうなる前にしっかりと人生を生きておこう、と。
ただ生きているだけじゃなくて、しっかり存在しよう、と。

後悔、後に立たず。
それに気付いたリチャードは色々と語りかけます。
それがどれだけの人に本当の意味で伝わったでしょうか。

それも含めて、生き様って難しいな、と考えさせられました。1日1日を大切に生きていきましょう。
かんなこ

かんなこ