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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3のしののレビュー・感想・評価

3.5
150分よりは短く感じたが、結局自分は最後まであんまりノれないシリーズだった。今までのなかでは比較的シリアスなのでまだ観れたものの、GotGが好きな人向けの作品という感じはする。ちょっとキャラクターの後始末に引っ張られ過ぎた。とはいえ、なんだかんだ3部作のなかでは好印象なほうだ。

何よりビジュアルの強さがある。これに関してはここ最近のMCU映画の中では上位で、直前に『クアントマニア』があったから尚更魅力的に映った。1作目のバラエティ感と2作目のスケール感の掛け合わせという感じで、「MCUのスペースオペラ枠は我々だ!」と言わんばかりの風格があった。有機物の星にはワンダーがあったし、ちゃんとメイクした宇宙人造形も良い。よく考えればまどろっこしい展開なのだが、ビジュアルでカバーしていた。

あと、今回はいつも以上にカメラに動きがついていて、よく退屈と言われる会話シーンなども単調にならないよう工夫がなされていたと思う。3Dで観たのもあるが、奥行きを感じさせる画が多かったのも印象深い。巨大感の表現もよくて、デカい星、デカい宇宙船と人物をポツンと対比させる画も随所にある。2001年〜やSWのオマージュが分不相応になっていない。スケールのデカい話がちゃんとスケールデカく映っていた。

また物語に関していえば、3作目にしてクイルではなくロケットの物語を主軸にした必然性は、あのラストを踏まえると確かに感じられる。しかもそこから波及して各メンバーの物語が「ありのままを受け入れる」という筋へと収斂していくのは、ああGotGってそういう話だよなという原点回帰感があって、納得はできる。

ただ、これは美点の裏返しでもあるのだが、結構な尺をガーディアンズの「いつもの」やりとりや宇宙巡りに割いているので、終盤で急に色々畳み出した感はある。ぶっちゃけ今回で解散になる必然性は無くて、そこへの持っていき方や関係性描写は今まで積み重ねたファンの感慨に頼っている気がする。

ここで問題になるのがロケットの過去を回想形式にしたことで、これには功罪あるのではないか。カットバックで一応タイムリミットサスペンス感は出るし、彼に寄り添った語り方にはなるが、一方でガーディアンズの面々がその物語を直接共有できない(知れても改造受けてる場面くらい)のは、チームのドラマとして見ると弱い。

だから「ありのまま」というテーマへの収斂が超ぼんやりしているのだが、そこをカバーするために各メンバーがハイ・エボリューショナリーへのヘイトを溜め込むという構成にしていて、なんだかうまく誤魔化された感はある。そりゃヘイト溜まるよ! ダメ押しのようにやたらキレるし煩いし。もちろんこれは「穏やかで完璧な種を創造するとか言っといてお前めちゃくちゃキレとるやんけ」という皮肉なのだろうが、それにしたってやりすぎだし、しかも動物と子どもに手出しているという徹底っぷり。

この辺の逆算のあざとさは、個人的にガン監督への違和感に繋がる点でもある。正直、GotGは自分にとって「ジェームズ・ガン監督のトロマ出身らしい露悪趣味と、ディズニー印ファミリー映画の食い合わせが悪いシリーズ」という認識があり、今回実はその不整合さを一番感じてしまった。一番感動寄りで「真っ当」なだけに。

これは例の事件で干されて以降そうなのだが、やたら「子どもに手出すやつは許さん!」「動物虐待反対!」みたいな真っ当さアピールに躍起になる節がある。ただ、その一方で脇役のクリーチャーや宇宙人を無惨な殺し方してたりするのを観ると、本当にそう思ってる? とは言いたくなる。たとえば、露悪を自覚的に描いてくれればまだ受け入れられる。『ザ・スーサイド・スクワッド』は自分は好きで、あれも「子どもに〜許さん!」的くだりはやたらあるのだが、暴力描写が哀しいものとして反転する瞬間もちゃんとあったりする。だから善悪にカテゴライズできない者が一瞬でも見せる尊い行動の話になっていた。それこそ『スーパー!』も暴力についてドン引きする目線をいれていたわけで。ガン監督はそういう「気持ち悪いものもバイオレンスも好きだけど、でもヒーローにも憧れている板挟み」をそのまま自覚的に提示してくれるとハマるが、GotGはどんどん「真っ当さ」に振れていくシリーズだった。

そこでいくと今作は正直アピールクサいな……と思ってしまった。本作の脚本は2018年4月に完成し、復帰後の2020年11月に少し修正が行われた、というのが公表されていて、キャンセル騒動と脚本の関連について正確なところは分からない。ただ、自分がシリーズ1作目から感じていた違和感が一番分かりやすく表出していたとは思う。確かに、単に真っ当なだけでなく、見放された者たちであるGotGの面々が今度は彼らを見放さない、という構造が綺麗なのは分かる。ただ、そこにクイルらよる無惨な殺し描写やらが同居する居心地悪さというのも結構ある。もっといえば、MCUであまり触れられていなかった動物の救命をGotGが(ロケットの物語起点で)カバーする形になるのも良点なのだろうが、その一方で、あのロケットの友達たちを本当に作業的に分かりやすく可哀想な目に遭うためだけの存在として扱っている気がして、やはり居心地悪い。

従って、やるなら自覚的な露悪に振り切って欲しいのだが、本作は随所に「これどういうノリでやってるの?」みたいな描写を挟んでくる。その一方で、真っ当さ、あるいは分かりやすいウェットさについては過去一レベルで強調されている(終盤、ネビュラがドラックスを見直す台詞とか、ウォーロックへのドラックスの一言とか、ガモーラとクイルのやり取りとか、とにかく説明的に処理しすぎだろう)ので、「ちょっと無理してない?」と思ってしまった。

あと、これまでに比べたらシリアス寄りになっているとはいえ、いやだからこそ、「マヌケで笑えるくだり」のしつこさがいつも以上に際立った印象だ。ふざけてる場合? と思ってしまうし、相変わらず容姿イジり知能イジりだし。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を経たあとだと余計にそう思う。

とはいえ、これだけ色々言っている自分も終盤の長回しアクションには陶酔したし、ラストシークエンスは問答無用で最高だった。MCUなのに、他のどのキャラクターよりも自分たちの物語だけを語り尽くせた三部作となって、ファンは幸福だろう。

※感想ラジオ
【ネタバレ感想】MCU史上最高の解散ライブ?でも相変わらずモヤる?『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』 https://youtu.be/dsGQS3-sUhw
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