春とヒコーキ土岡哲朗

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3の春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

カラフルで宇宙で独特なノリ健在で、それが終わる。

かなり悲惨な話だった。ロケットが改造アライグマになった経緯がやっと明かされたが、MCUでもぶっちぎり胸糞だった。動物たちを実験台にして無理やり知性を持たせた男、ハイ・エボリューショナリー。動物たちは、痛みと恐怖と檻に囚われながら、疑うことを知らず、ハイエボのことを信じている。ハイエボの目的は自分の理想の文明にふさわしい完璧な生命を作ることで、ロケットたちはその途中の実験台でしかない。ロケットが初めて檻で他の動物たちと出会ったときに、今とは違う幼い声で「痛い。痛いよ」と言うのは見ていて苦しかった。それでも、動物4匹で友情を深め、支え合って過ごす姿には癒された。しかし、その癒しも全て奪われる。ハイエボが自分たちを生かすつもりがないと知ったロケットが、それを仲間たちに告げる。仲間たちは、そんなの嘘だとパニックになったり、逃げだすのが怖くて残ると言ったり、それぞれの反応がまた絶望感を煽る。ライラとロケットが檻から出たところ、ライラがハイエボに撃たれて死んでしまう。ここでロケットは、敵の銃を奪い、初めて銃を乱射する。アライグマが銃を使うというかっこいいミスマッチは、こんな悲しい理由で、そんな瞬間は訪れない方がよかったとしか思えない形で誕生していた。ガーディアンズに出会う前に一度家族を失う恐怖を知っている男の話。

瀕死のロケットは、はざまの世界でライラと再会し、死後の世界に行ってしまおうとする。そこを、ライラが「まだよ」と止める。今はガーディアンズという家族が、行かないでくれと願って必死で救おうとしてくれている。彼らがいるなら、まだ生きる意味がある。失った仲間がいない世界を受け入れ、失う恐怖を知ってもなお今の仲間に心を開く。その上で、ハイエボを殺さない。その理由が、「クソガーディアンズオブギャラクシーだから」。復讐で人殺しをするのでなく、人を救う集団だと自負する道徳心で、悪との格の違いを見せつけた。

ロケットはハイエボに「お前は完璧を求めたんじゃない。ありのままを否定したんだ」と言うが、そう言っただけあって、ガーディアンズの解散も、互いを尊重する形で行われる。
中でも、ガモーラがピーターとくっつかずに離れていくのが象徴的。このガモーラは1作目から旅をしたガモーラではなく、別のアースから来たガモーラ。ピーターと交際していたことはない。それでも前のガモーラの上書きになってもらいたがるピーターは、彼女にとっては大迷惑で、尊厳無視も甚だしい。誰かの代わりを別の人に求めるのは独りよがりだ。最後には、ピーターは彼女が自分の恋人とは別人だと受け入れる。『エンドゲーム』公開後は、きっと3作目では新しいガモーラと改めて恋人になるのだろうと思ってそれを期待していたが、そんなのは違った。かつてのガモーラとの死別を受け止め、今のガモーラは彼女以外の何者でもないことを尊重する。そしてメンバー全員が、仲間が次にすべきことを尊重して、解散。この家族を失わないために必死に戦ったが、晴れて解散するときはそれを止めない。