ソニア

トゥルー・ロマンスのソニアのレビュー・感想・評価

トゥルー・ロマンス(1993年製作の映画)
4.6
ブックオフで3000円で売られており、「面白ければ元は取れる」と思い購入。鑑賞後この映画に対して3000円という値段は安いと痛感している。

監督トニー・スコット(2012年没)と脚本タランティーノによる本作は、ひょんなことから恋に落ち、ひょんなことから大量のコカインを手にし、ギャング・警察に追われてしまう男女2人の逃避行を描いている。
大量の血飛沫が舞い、バイオレンスにまみれた映画だが、中心にあるのは一貫して2人のハネムーン。このミスマッチというか異様な組み合わせに最初は動揺しつつも、「ロマンチックだ…」と心の声を漏らしてしまう。

この映画を知ったのは恥ずかしながら5年前。当時はサブスクやSNSで有名な映画を気分で辿っていた自分は、サブスクにない映画は知る由もなかった。そんな中、本屋で何気なく手に取った「流浪の月」という純文学の小説に本作の名前が登場した。詳しい内容は控えるが、こちらも男女2人の逃避行を描いた作品である。名前が単純に登場するだけでなく、シーンについての描写や、タランティーノが監督した別のエンディングについての言及もあり、これは作者が相当好きだったんだなと印象に残っている。

トニー・スコットはリドリー・スコットの弟としても有名だが自分は観るのはこれが初である。「トップガン」や「クリムゾンタイド」など名作を生み出している監督なので、入門として期待していたが、このトゥルー・ロマンス、想像以上にタランティーノである。なんでもタランティーノの作ったセリフを一切変えずに撮ったそうで、いきなり登場人物がよくわからない話をしだしたり、ブラックジョークだったり、タランティーノの顔が鑑賞中ずっとチラついてしまった。

肝心の内容だが、驚くほど2時間が速く感じる。折り返しくらいかなと思ったらクライマックスに突入した。テンポよく話が進むのもあるが、シンプルに面白かった。俳優が豪華すぎるのももちろんある。サミュエル・L・ジャクソンをここまで雑に扱えるものなのかと笑ってしまったし、フロイドがちょい役すぎて本当にブラッド・ピットなのか疑ってしまった。あと先日「裏切りのサーカス」を鑑賞して、まだ自分の中で温かいゲイリー・オールドマンがイカれ役で登場。やはり千変万化の俳優である。ということで体感は1時間ちょっとであったわけだが、もっと長く観ていたかったというフラストレーションに駆られている。

そして何より主演の2人。他の作品は一切知らないが、魅力に溢れている。コミック店で働く冴えない映画ファンの青年、まさしくタランティーノの投影である。暇な時に妄想してしまうような、美女と逃避行を脚本として昇華する姿にニヤニヤが止まらないが、妄想として圧巻の完成度である。アラバマはチャーミングで衣装もかわいい。キャラの造形から配役まで完璧である。

サブスクにもなく、ブルーレイやDVDも簡単には手に入らないが、2人のロマンスに胸キュンしながら、アクションシーンに興奮し、スリリングなシーンでは手に汗握り、差し詰めジェットコースターのような体験をぜひ味わってほしい。(ジェットコースターに乗るシーンも素晴らしかった)
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