あなぐらむ

帰ってきた狼のあなぐらむのレビュー・感想・評価

帰ってきた狼(1966年製作の映画)
3.6
シネマヴェーラ渋谷の西村昭五郎特集で。その後、自分が企画した上映イベントでもかけた。

デビュー作から三年後、多く助監督についた師匠格の中平康「狂った果実」と、後輩となる藤田敏八「八月の濡れた砂」の間を埋める日活湘南映画のミッシングリンクがこの作品。

決して巧くは無い近代化批判を説く凡庸な倉本總脚本を、名手・姫田真佐久を撮影に迎え、スタンダードサイズの画角から始める実験的な手法と黛敏郎のボサなスコア、そして何よりも小悪魔なヒロイン、ジュディ・オングを魅力的に撮りきり、ベトナムを向こうに見た混血青年の鬱屈と悲哀のやりきれない青春の夏の日を、甘美に描き出す小品。
中平を模倣したようなヨットやボートのシーンは微笑ましい。
モノクロを生かしメイクした山内賢を混血に設定するチャレンジは成功している。本物の混血でこの時期の日活作品でよく見るケン・サンダースがまた良い。高品格、小沢栄太郎も適材適所でいい仕事。