このレビューはネタバレを含みます
『ブエナ・ビスタ ソシアル・クラブ』のドラァグクイーン版。
往年のディーバたちが若かりし頃に立ったステージの記念企画で再び舞台に立つにあたってのドキュメンタリー。
今でこそ「表現」として確立されている感のある女装だが、半世紀前のそれも軍事政権下での体制側による圧力の中でそれに抵抗して我を貫いた"彼女たち"の見せるステージは「生き方」そのものであり、年齢もあってやや自己賛美が過ぎるように映る嫌いがあるにせよ、その瞳は輝きを失わず力強い。
往年の若い男性時の姿とその女装姿がオーバーラップするオープニング演出はなかなかの見応えで期待を持たせる。
予告編でも流れていた、ディーバの内の一人が艱難辛苦を経て数十年の付き合いの恋人男性との結婚をステージで報告する姿は観ていて胸に来る。
ケバケバしいおばあちゃんたちのビジュアルはなんともドギツいが、酸いも甘いも味わい尽くしたその笑顔は皆穏やかで優しい。
ステージの煌びやかさのみならず、マイノリティーの方々が逞しく生きる姿にも目を奪われるドキュメンタリー作品。