バロウズ

ゴッズ・オウン・カントリーのバロウズのレビュー・感想・評価

4.1
イギリス、ヨークシャーの寒々とした灰色の空と荒野のように、主人公ジョニーの心は荒れ果てている。アルコールに依存し、行きずりの男と乱暴なセックス。実家の畜産業も困難を極める。
そんな中、住み込みの仕事にやってきたルーマニア人の男、ゲオルゲと出逢ったことで、荒んだジョニーの心は満たされていくが…

手と手が触れ合うってだけのシーンがとてもエモーショナルに描かれているのが印象的。
音楽やセリフは少なめ。それでも伝わってくる物がある。安易に「愛してる」なんて言葉を使わなくても、手と手が触れ合うことでその温もりが画面を通して伝わってくるようだった。

手の平に怪我をするっていうのはやっぱりキリスト教的な演出なんでしょうか。最近見た「1917」でも手に怪我してたなーそういえば。

主人公のジョニーにはちょっと共感できない部分が多いんだけど、その不完全さがゲオルゲの存在を引き立たせている。
生まれたばかりの子羊を蘇生し介抱するシーン。死んだ子羊の毛皮を剥ぎ、別の子羊に着せるシーンなんかはその手際の良さに見入ってしまった。
優しさと逞しさを持ち合わせたゲオルゲにジョニーはますます惹かれていく。

ゲオルゲを演じるアレックセカレアヌのちょっと照れたような笑顔が役にピッタリで、この映画をより一層魅力的な作品にしていると思った。
お互いを「Faggot」と呼び合うシーンも微笑ましかった。

イギリス版「ブロークバックマウンテン」と評されるだけあって、LGBT映画史に残る傑作なのは間違い無いんですが、「ブロークバック〜」と類似点多すぎなのはちょっと気になった。
あと同性愛に理解の無い人は見る事もない映画だとは思いますが、性描写はややキツめなので、人によっては嫌悪感を抱くかも。
本物の死骸を使った動物の解体シーンもあるので万人にはオススメできない作品です。
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