このレビューはネタバレを含みます
神の恵みの地、その美しさに息を呑んだ。
映画の最初~半ば辺りまでは、どこまでも続く荒涼とした寂しい牧場の大地は主人公のジョニーの空虚な心を反映しているかのように見えた。彼の荒みきった心が行きつくのは酒と煙草、一夜限りの火遊びで、若いはずなのに目には精気が消え去っている。牧場を切り盛りするのって骨が折れる仕事だし、休みたくてもめったに休めないからストレス溜まるんだろうな、とそこから分かる。
それでも、ヨークシャーの自然は本当に美しい。平坦で広大な土地だからこそ、その形の美しさが際立っていて、その風景が好きになる。
また、イギリスの牧場の様子や羊の出産期など、興味深くて面白かった。
ジョニーとゲオルゲが愛し合ったことで、ジョニーが変わったことがよく分かる。特にジョニーがゲオルゲに「変わろうとしているんだ、そう努力している」と涙ながらに語り、感情を表に出せるようになったのが良かったと思った。
しかしゲオルゲができた人間で本当に良かった…こんな人そうそういない。
ジョニーを静かに支えてくれている優しさが温かくて、それは手放してはいけないものなのだと強く思わせる。
台詞が少ないのは気になるんだけど、この映画にはそれが合ってるのかもしれない。風景と心情を「見せる」ということに重きを置いているように感じた。傑作だと思う。