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バイスのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

バイス(2018年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

なんだか作りの軽さというかテンションが性に合わなかった。

観終わった後で「マネー・ショート」の監督だと知り、なるほどなぁと思った。「マネー・ショート」では複数の主人公たちを並列に描きながらややこしい金融の話を進めていくということで、独特の"洒落た""軽い"演出がピッタリと合っていた。本筋とは無関係な人間がこちらに話しかけてきて状況説明をする手法は、難しい内容を説明するのにぴったりだ。

しかし今作は主人公を一人に絞った伝記映画であり、その人物を深く描く必要がある。しかも彼は副大統領で、テーマはイラク侵攻だ。この今作のテイストに対し、監督の作風は完全にミスマッチだと感じた。監督の「お家芸」のせいで終始ノリが軽いし、あちらこちらへと話が飛ぶので映画として落ち着きがなく、内容がいまいち入ってこない上、感情移入もしにくい。130分もかけて、結局チェイニーがどういう人物だったのか全然伝わってこないのはどうかと思う。

彼が副大統領になるまでを描いた前半で全然彼の人間性を描けていないため、前半の内容が後半に生きてくることはない。後半では彼が権力を捻じ曲げて行使しまくっていたことだけしか伝わらないし。当時の政権を批判したいのだとしても、もうちょっと上手く描けないものか。つまらない風刺画を長々と見せられた気分。

演劇調に会話させるシーンや中盤で入るエンドロールなど「こういうの面白いでしょ画期的でしょ」的なドヤ顔演出にも辟易。序盤から出てきた語り部が心臓提供者だったとか、心底どうでも良すぎてため息しか出なかった。伝記映画にこの手の嘘シーンはノイズでしかない。

クリスチャン・ベールは本当にすごい。カメレオンにも程があるわ。
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