馮美梅

こはくの馮美梅のレビュー・感想・評価

こはく(2019年製作の映画)
3.5
兄はなぜか仕事もせず実家住まい。弟は父のガラス工場を引き継いでいる。
大人になれない兄と、父親という意識が薄い弟。

大好きだった父が小学生の頃に突然いなくなってしまってから、彼らの心の時間は止まってしまったのかもしれない。いつも兄に振り回される弟。

再婚した相手が妊娠して嬉しい反面、戸惑う弟。実は前妻との間にも息子が2人いるけれど、どうにも愛情を持てないでいる。これから生まれてくる子供に対してもまた愛情を持てないのではと不安に感じている。

所々子供の頃の映像が浮かんでいるけれど、そこに出てくる父親は井浦新さん、ひたすら父を探す兄。ずっと父に裏切られた、捨てられたと思って生きてきた兄弟に死ぬ間際母に言われた言葉。

そして、ついに父の居場所を見つけた兄弟。
何十年ぶりに再会した父はあの頃と同じように優しかった。
父は父で色んなことがあって家族と別れなければならなかった。でもその時まだそんな大人の事情を理解する事なんてできなかった兄弟。

別れたときの父の言葉を信じて待ち続けた兄が気持ちをぶつける。兄の本当の思いを知り、父が自分たちを捨てたわけではないとわかった弟はようやく大人として、父として子供たちと向き合うことが出来そうだ。

アキラ100%さんが俳優・大橋彰として挑んだ作品。井浦新さんとのバランスも良くて、女性に若干だらしないけれど、父との再会のシーンは本当に渾身の演技を見せてもらいました。

父と会うことで弟の父のイメージが自分から父の姿となり、子供たちと別れた後の様子もわかることで、好きで別れることになったんじゃないと、すべては家族の為だったんだとわかる瞬間の鶴見慎吾さんの表情も良かった。

この作品も観終わった後、余韻が長く残る作品です。
馮美梅

馮美梅