Pocalishead

ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンスのPocalisheadのレビュー・感想・評価

3.0
ヴィヴィアン、4月生まれっぽいなって思ったら、やっぱりそうだった。人に興味があるようでない、けれど不思議と信頼を寄せ付ける、たくさんの人に愛される不思議な生まれ月の人。なんとなく感覚でやってみたら才能という言葉がしっくりきてしまう位になって、態度で説得力を体現できてしまうような。THE 4月生まれって感じの人だった。

ショーの映像や、参加したモデルたちのインタビューを見て、涙が出そうになるくらい圧倒された。

まだヴィヴィアンウエストウッドなんて経済的に手をつけられない幼い頃に、ファッション雑誌が全盛期で、ヴィヴィアンのパクリみたいなブランドがたくさん載っていて、パクリでもその空気感に足を踏み入れる事が許されたような気がして嬉しくなった。パクリでもそれぞれクオリティは高かったような気がする。今よりも生地の質もずっと良い。パクっても尚オリジナリティを確立していくブランドたちで、街は今よりも華やかだった。
原宿に初めて行った時の、何歩か歩けば魅力的なお店が幾つも発見できるあの雰囲気を、今でもそれを探しに行くつもりで原宿に向かう自分がいる。あのブランドの何かが欲しい、なんでも良いからと、安易な気持ちで手に入れたものでさえ、15年経ってもまだ自分の手元に残っているほど思い入れがある。まだ洋服に魂を感じる、そんな時代を思い出して、切なくなった。

映画を観たことで、かつてのヴィヴィアンウエストウッドの勢いがなくなってしまったことに納得できた。烏滸がましいけど、ヴィヴィアンと同じ気持ちだ。服を作り続ける為に、もっといろんな人の手に渡りやすくする為に、会社を大きくする為に、いろんな人の力を借りなければならなかった。みんながそれぞれ最善を尽くすことで、会社の方向性に一貫性は無くなっていく、そしてヴィヴィアンが作りたい服はどんどん作れなくなる。ビジネスにのまれてしまう。それは洋服にとって絶対に良くない。縁のある人(客)は自ら匂いを嗅ぎ付けてやってくる。自然とつながっていくもの。広める意味、それはブランドの価値を逆に下げてしまうことにもなりかねない。

これでも良く描かれている方だと思うけど、現場は感覚地獄の戦場だと思う。
デザイナーを目指す人々がこの映画を観て、プレタポルテに力を入れる前のヴィヴィアンウエストウッドに憧れることが、果たして良いことなのか悪いことなのか。映画に出てくる人たちも、職人気質という言葉で片付けられるような想いでやっているわけではない。
どちらにしても、感情も技術も、「使う」くらいの軽い気持ちが大切な時もあるんだろう。

良いドキュメンタリーでした。
昔の映像と今の映像とが入り混じる構成がちょっと見辛くて、意味を感じ取れなかったのは自分が色々考えながら観ていたせいかもしれないが、考える隙を与えてもらえなかったからという事もあると思うので、星3つです!