寝木裕和

ミレニアム・マンボの寝木裕和のレビュー・感想・評価

ミレニアム・マンボ(2001年製作の映画)
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90年代後半から、2000年入ってしばらくの頃、この映画で垣間見られる空気感… 、ここ日本でも似た雰囲気が漂っていた。

でもこの作品の主人公・ビッキーの恋愛事情は、ミレニアムというものを区切りに変わったりはしなかった。

仕事もせず、親の時計くすねて売った金でコカインやっているダメ男、ハオとは離れたり結局引き戻されたりしながら、惰性みたいな付き合いが続いている。

個人的には、東京あたりでもバンドマンのシーンの近くにいると、ダメな男に引っかかった末、どんどんやつれていく女の子をたくさん見てきた…。この作品、台北を舞台にしたものなのに、そんな既視感で少し切なくなる。

「ミレニアム」なんて、文明社会がなんとなく作った区切りに過ぎないということ。

けれど、この作品でたびたび重要なツールとして登場する携帯電話にはハッとした。

この頃にはもう世界的に携帯電話は一人一台の時代になりつつあったのだろうけれど、まだいわゆるスマホではなく。
けれどホウ・シャオシェン監督は台北⇄日本… と行き来するシーンも、携帯電話をたくみに使い、ビッキー 〜 ハオ 〜 ガオの三角関係的行き違いを描く。
監督の先見性を感じさせる演出だ。

時代というものの影響を受けない普遍的な男女の恋愛模様、そしてこの時代特有のデカダンスな空気感… その調和が絶妙。
寝木裕和

寝木裕和