このレビューはネタバレを含みます
いろいろと癖のある役柄に挑戦し続けるカンバーバッチ。
今作は、秀作だと思います。
幼い娘をスーパーで見失い、愛し合っていた夫婦関係が崩壊する。
映画ではありがちな設定だけれど、ただ淡々と夫婦の心理描写を続けるところがとても文学的。
心を動かされたのは、今の環境もある。
娘の失踪もそうだけれど、
人間は無力だ。
生や死といったものについて、
人間がコントロールできるものはほぼない。
期待や失望に苛まれても、それでも人間は耐えながら何かを待つしかない。
それが叶わないかもしれない希望であっても、
人間は希望を胸に生き続けるしかない。
スポットの母が劇中で、スポットを妊娠してる時に訪れた店の窓から、成長したスポット(かもしれない)美しい少年を見て確信したと泣くシーンがある。
スポットは、妻が突然産科病院から電話してきた途端に、絶望の淵から這い上がり病院へ駆けつける。
病院へ向かう電車中で、可愛い幼い少年がスポットに微笑みかけ、次の瞬間には消える。
廊下では失踪した幼いままのケイトが無邪気に喜んでおり、スポットは当然のようにケイトと手を繋ぎ今まさにケイトの弟が生まれんとする病室へ入る。
映画はここで終わり。
ケイトのその後はわからない。
重大なことが起きた時、人間はほとんどのことをコントロール出来ない。
でも、希望を持ち続けることはできる。
シンプルなメッセージが、胸に響く映画でした。