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グスコーブドリの伝記のJのレビュー・感想・評価

グスコーブドリの伝記(2012年製作の映画)
3.5
ぼくは宮沢賢治が好きだ。そしてその魂を猫に宿して描かれたますむらひろしの銀河鉄道の夜やオリジナルの作品も好きだ。

そして彼の作画を杉井ギサブローが研ぎ澄ませできた映画銀河鉄道の夜は、とんでもなく素晴らしい作品だと思っている。なので、このグスコーブドリの伝記にも期待が募ることに違いはない。ただ、このお話、原作自体もとても難解だった気がする。それぞれのファクターへの暗喩が、宮沢賢治独特の言葉遣いで、すーっとは心へ入ってきてくれない、ただ入った時にどしんとくるからすごい。ますむらひろし版のブドリも見たけれど、実体化してもそれでも難しいものを感じていた。なので映画はどうなのだろうと思ってはいたが、、

難しいよね、これ。
銀河鉄道の夜の方が、きっと映画化しやすいだろうね。
それでも映像化してこの世界に今一度浸れたのはよかった。

ブドリや、この世界に住む人たちは、
本当に冷酷な現実を前にしているときには、悲壮感に包まれた冷静さでいることもあることだろう。だから連綿と「雨にも負けず」が心の支えとなり、しかしそれは情熱的温度ではなくあくまでも氷のように冷めた冷静さを持って、最期へ挑んだはずなんだ。自分の心の冬も終わらせるためかもしれないし、、

文学は往々にして至極難しいものだと思う。
もう一度見るタイミングがくるはずだ。
そういう作品かもしれないとは思っている。
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