みかぽん

旅するダンボールのみかぽんのネタバレレビュー・内容・結末

旅するダンボール(2018年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

島津さんのダンボール愛が半端ない!
普通の人なら100倍の難関を通過して有名広告代理店(多分電通?)に入社なんかしちゃったら、それこそ功名心に燃え、ダンボールのことなんか何処へやら、ですよね。
しかも受験動機も教授から「一度は就職して外の世界を見なさい」の言葉に従って3年間の勤務を決意。したものの、当初の予定通りに3年余りで退職したことを知り、「うそぉ〜何で勿体ない」の世界。。
先ずは彼の気持ちのブレなさ加減に驚く反面、うがった大人の私はその発言の綻びを何処かに見つけようとあのテこの手で観察する。のだけれど…何処にも見つからないどころか、ダンボールを完全に擬人化している邪気のないその姿に、私の汚れた心がどんどん浄化され、引き寄せられて行く展開に。。

だって、インドの強い日差しに晒されたからであろう、とその表面の傷みに思いを馳せたり、出会うまでに引きずられて付いたのであろう、と底面の傷を愛おしそうに撫でてみたり、生まれたばかりのダンボールに〝ダンボールは温かい…〟と呟いてみたり。およそ私のおつむの引き出しにない感性に次々やられっ放し。
と同時に、そんな姿を見るうちに何故か唐突に、鉄腕アトムを再生させ、人間としての側面を持たせたお茶の水博士に島津さんを重ね始め(私もかなり唐突…😅)「真のクリエイターは人が完全に見過ごすものの中にそのポテンシャルを見出し、創造の探究が出来る人を言うんだ…」と得心。ていうか、ダンボール愛を語るこの人のエネルギーはまさに無限大で、側でその話に耳を貸すだけで心の底が清められ、まさに幸せオーラに包まれる感覚になのだから凄いったらありゃしない。

ちなみに私は小豆(あんこ)が大大大好きで、丹波産と十勝産の味の違いの本質を見極めたいなと薄ぼんやり考えたことはあるので、島津さんの一目惚れダンボールのルーツ探し(その制作過程と生みの親を見つける旅)に出かける気持ちにも心から共感。
しかしあれこれ想像を膨らませていたロゴとキャラクターデザインをされた方はどうやら認知症を患っており、当時の記憶がまるでないご様子。その傍に座る奥さんが、せめて5年前にお会い出来ていたら、と申し訳なさそうに語るばかり。
当の老デザイナーも、島津さんが遠慮がちにする作成時の質問に対し腕を組み、あるいは解いて降ろした右手がグーのまま震えていたりと、明らかに不安や緊張、怯えが見て取れてで。
しかし島津さんからプレゼントとして差し出された可愛いロゴが反映されたダンボール製長財布には緊張が笑顔に変わり、隣に座る奥さんに至ってはその存在に号泣されてこちらまで思わずもらい泣き。

最後のオマケは鑑賞の帰り道。入場の際には受け取ったダンボールに若干困惑していた私なのに、いつしか胸に抱えて家路を急ぐ姿はまさにプチ島津さん。そんな自分に自分が苦笑い。そして再びほっこり気分を再熱させました😭
みかぽん

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