りょう

愛しのアイリーンのりょうのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
3.8
 “アイリーン”でイメージするのは、シャーリーズ・セロン主演の「モンスター」、アメリカの2011年のハリケーン、そしてSkid Rowの1995年の名曲“Eileen”です。どれもこの作品とは無関係ですが、なぜか印象的な女性の名前です。
 田舎の嫁不足を解消するためにフィリピンの女性と国際結婚するなんて、いつの時代のことかと思えば、原作は1995年頃のマンガだったようで納得しました。2018年に映画化するなら、もっと現代的にアップデートしてもよかったと思いますが、舞台が豪雪地帯のド田舎なので、あまり違和感はありません。
 このポスタービジュアルからすると、少しスタイリッシュな映像を予想しましたが、容赦ない田舎の風景に婚期を逃した中年男性の悲哀が漂う世界でした。こんな社会を放置していたら、まさに墓穴を掘るようなもので、都会への人口流出を誰もとめられません。
 中盤まではゆる~い描写ですが、吉田恵輔監督の作品がそのままであるはずがなく、後半は息つくことも忘れそうな怒涛の展開でした。予想どおり嫁姑の修羅場になり、希望があるのかないのか判断できないような壮絶なエンディングです。
 日本の男性と外国の女性による搾取の構造が描かれていますが、いずれは、そんな搾取も成立しないほど、日本は海外からも嫌厭される国家になりつつあります。働いても円安と低賃金で稼げないし、そもそも外国人の人権が保障されていません。その意味では、ひと昔以前の物語だった印象は否めません。
 ただ、まともな登場人物が1人もいないような徹底した描写は、吉田恵輔監督ならではの脚本と演出です。河井青葉さんを意識的に観たのは初めてかもしれませんが、絶妙に中途半端な魅力がこの役柄にマッチしていました。
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