ゆっけ

愛しのアイリーンのゆっけのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
4.5
𠮷田恵輔監督。不器用に生きるダメな人にとっても優しい監督作品大好きです。『愛しのアイリーン』は、どんなダメな人が描かれているのかというと、

42歳非モテ男。
日本に出稼ぎのために結婚するフィリピン女。
一人息子の将来を憂う年老いた母親。

の3人。

『犬猿』は兄弟(姉妹)を描いていて、大衆よりでしたが、今回は『さんかく』のようにドロドロしていて、観る人を選ぶ作品かもしれません。でも、監督の中でも集大成感はある作品だと思います。

監督作品を、完全主観で、一般受けするかどうかで下に並べてみますね。

<大衆より>
『犬猿』『銀の匙 Silver Spoon』『麦子さんと』『ばしゃ馬さんとビッグマウス』

<コアより>
『愛しのアイリーン』『ヒメアノ〜ル』『さんかく』『純喫茶磯辺』『机のなかみ』『なま夏』

『ヒメアノ〜ル』よりも衝撃さは少ないですが、余韻が残り、時間が経つにつれてだんだんといい映画だったなぁと思い返せる映画だと思いました。2度、3度観たらまた感動が変わるかもしれません。

42歳独身の岩男は、職場のパチンコ店の女性に恋するのですが、振られてしまい、やけになり、フィリピンへ嫁を探しに行き、貯金280万の全てを使い、国際結婚することになります。それが18歳の娘、アイリーンです。彼女も家族の生活のために嫁ぎに行っただけなんですよね。岩男はただヤりたいだけ。

結婚すると母親に報告したら、母親はそりゃ怒り狂うんです。アイリーンに猟銃を突きつけ、追い出そうとします。アイリーンと母親の関係性が非常に面白くて、お互い女ですから、本性出すときは出すし、笑顔でいながらも、ひどいことを伝えるシーンは笑ってしまうほど(母国語が違うのでそれぞれ言いたい放題)。壮絶な嫁姑バトルです。

ただ、これがいろんなことが起きて、二人の関係性が変化していくラストが涙崩壊レベルで感動します。

舞台挨拶で、岩男役の安田顕さんも言っていましたが、前半は岩男の”夏"の話で、後半が母親ツルとアイリーンの"冬"の話。

暑苦しい不器用な男の嘆きと足掻きを描いただけでなく、地方の過疎化、国際結婚や後継者問題、嫁姑問題、介護問題、など様々な社会問題を扱い、生きづらいけど、愛がある家族を描いた温かい映画です。

「オナニー」「セックス」「バイオレンス」の3つが避けて通れないので、抵抗がある人はいるかと思いますが、かなり深い内容になっているので、ぜひ観てほしい。

岩男。不器用すぎるけど、愛があるんで、憎めないんです。「おまんごー!」と叫び続けるので、怖いのですが、アイリーンと初めてキスするシーンはかなりロマンチック。安田顕さんにしかできないキャラです。

アイリーンも見ていくにつれて、かなり可愛いし、家族を大事にするいい人。母親もやりすぎなところもありますが、息子を想う気持ちがあってこそ。それぞれが、誰かを幸せになって欲しいと想っているだけなんですよね。

素晴らしい映画でした。
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