大道幸之丞

パンク侍、斬られて候の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

パンク侍、斬られて候(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

これは「町田康版“大菩薩峠(中里介山)”」だ。

というか構成はあっけらかんと丸パクリで、冒頭で巡礼親娘の老人が袈裟斬りされた時点でそれを識るものは「ああ、ラストはこの娘に殺されるんだな」とネタバレしてしまう。

そもそも町田康(町田町蔵)と石井岳龍(石井聰亙)が組んだ時点で「爆裂都市」を連想する世代なら本作がろくな事にならないのはおおよそわかる。

この作品を簡単に言えば「壮大な松竹新喜劇(吉本ではない)」だろう。アホな事を大枚はたいて真剣にやる——という美学。

鑑賞者には「んなアホな!」「なんでやねん!」と突っ込みしながら観てもらいたいのではないのだろうか。

中には内容が全くハマらない者もいるだろうから豪華なキャストで「お得感で逃げ切る保険」を打っておいているようにさえ思える。

ところで「腹ふり党」の「腹ふり」は町田氏お気に入りのフレーズで1992年には町田町蔵名義でアルバムも出している。https://amzn.to/3PqN595

——そんな「パンク侍斬られて候」だが、わたし的には実に想定内で、「ああ、石井さんまだ元気だな」と確認できた事が何よりだった。

町田氏の原作共々「大阪の笑い」のテイストは「大きなイナカの決まり事」のようで、おそらくこの笑いを受け付けられる層は日本で西側だけだろう。だから面白く感じなくても大丈夫。

私はBlu-rayの付録で上映イベント時の模様をまとめて一通り観たが、この作品はどちらかといえば俳優のためのイベント要素が強い。

それにしても永瀬正敏をニホンザルで起用するやりかたはいい。石井監督との信頼なかりせばと思う。