ジェイコブ

カツベン!のジェイコブのレビュー・感想・評価

カツベン!(2019年製作の映画)
3.3
子供の頃から一流活弁士を夢見ていた染谷俊太郎は、食べていくために泥棒一味のもとで、偽活弁士として働いていた。真っ当な活動が出来ず、鬱憤が溜まっていたある日、俊太郎は活動写真に精通する刑事木村に偽物と見抜かれ、泥棒一味は検挙されてしまう。一味のボス安田を裏切り、自分だけは盗んだ金と共に逃げ遂せた俊太郎は、人気が落ち込む小さな映画館「青木館」に流れ着く。そこには、俊太郎がかつて憧れた人気活弁士山岡がいた……。
映画の前身である「活動写真」と、舞台袖で描写の説明と台詞を語る活弁士を描いた周防正行監督作品。当時の観客は、活動写真を楽しむ客よりも、活弁士の活躍を見に訪れる人が多く、人気の活弁士はそれこそ、今で言う人気声優のようなアイドル的な存在だった。海外ではチャップリンやキートンなどを中心に、サイレント映画が人気を博していたが、日本は伝統芸能の要素を取り入れ、独自の文化を形成した。劇中で山岡が語るように、映画に音声が伴うようになると同時に活弁士も姿を消していった。しかし、活弁士の腕一つで作品の魅力が左右されるという日本独自の要素は、後の声優にも通じる部分であり、声優文化の発展にも影響を与えたと言えるだろう。
本作は新喜劇のようなドタバタコメディであり、山場の自転車によるカーチェイスなども見どころの一つ笑。俊太郎と安田を執念で追う木村の姿は銭形警部にしか見えない笑。
ただ、俊太郎が憧れであった山岡がなぜやさぐれてしまったのか、イマイチ理由がぱっとしなかったため、バックボーンをもっと描いてほしかった。