蟬丸

来るの蟬丸のレビュー・感想・評価

来る(2018年製作の映画)
4.2
 原作『ぼぎわんが、来る』は恐怖の源そのものではなく、出来事とそれに対する人間の反応を描くことで恐怖を描くという手法で書かれたらしい(未読だが)。この映画も、やって来る"それ"を明確に描くことをせずに人物が恐怖し、狼狽る様子が印象的だった。
 古今東西、悪いことばかりしてたらお化けが来てしまうものだ。大人の生々しい悪さとはつまり心の弱さでもあり、そこにつけ込む"それ"のような存在を重々承知した上で、悪事をどうぞ。
 しかし恐怖というものは厄介なことに想像力が逞しいほどに強くなる。ホラー映画を観た後、お風呂でシャンプーを流す時やひとりで夜道を歩いている時についつい振り返ることほど不合理なことはないが、どうもそうせずにはいられない。こわくて。すでに植え付けられた恐怖の種に勝手に水をやっている自分の想像力が憎い。根拠のない不安も大抵妄想の域を出ないものだが、完璧に拭い去れたためしがない。これからもたぶんそう。
 キャラクターは全員キャラが立っててよかった。真琴のような精神性、持ちたい。
蟬丸

蟬丸