ちろる

あの日のオルガンのちろるのレビュー・感想・評価

あの日のオルガン(2019年製作の映画)
3.8
1944年太平洋戦争真っ只中、東京の戸越保育園では、田舎に疎開するために受け入れ先を探していた。
疎開させたくない親たちも、空襲を目の当たりにして、泣く泣く子供達と離れ離れになる事を決心。
一方、保育園ではようやく見つけたのが、埼玉の奥地にある田舎のボロ寺。

今日聞こえたのは、空襲警報ではなくて、子供たちの笑い声とオルガンの音だけ。

大人になれないみっちゃん先生
怒りの乙女と呼ばれた楓先生
器用で、包容力のあるよっちゃん先生
男勝りで、楓先生の右腕の正子先生

個性豊かな先生たちが、子供達の無邪気な笑顔を守っていく。
その一方で、故郷の東京の空襲は悲惨なもので、子供たちの東京の家も、家族も全部焼き殺してしまった。

本当に親たちから引き離して疎開させたのは正しかったのか?
そう分からなくなってしまった楓たちが、疎開保育園をやって良かったと確信できたのは最後に残ったやっちゃんたちが父親と再会できた姿を見たからだろう。

53人もの子供たちがらほとんどの時間、空襲に怯えることなく、無邪気な笑顔のまま終戦を迎えることができた。
空襲で亡くなった親たちの子供が最後に会えなかったのは切ないけれど、親と共に亡くなるはずたった命が守られた。
あの日のオルガンの音、あの場所でのびのびと疎開した子供たちはきっと忘れないに違いない。

空襲の残酷さを所々に挿入しながらも、どちらかというとこどもたちと保母さんたちのイキイキとした姿が印象に強く残る戦争映画。

作品のメガフォンを取るのは、最近の山田洋次監督の作品の脚本を手掛ける平松恵美子さん。
今回も女性らしい柔らかな視点で、力強い女性たちと、こどもたちの姿を魅せてくれる作品でした。
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